試合終了のお知らせです

「もうおしまいですよ」
「たのしかったですか」



「みずしませんせい?」



 酷く冷たい声が、水嶋の耳に突き刺さる。
 声がナイフならとっくの昔に息の根を止められているんじゃないかなんて思えちゃうくらいに、月子の言葉は水嶋の心臓を抉る。

「わたしはあなたなんかあいしていません」
「あなただってそうでしょう?」

 月子がわらう。
 月子がわらう。
 月子がわらう。
 
 抉られた心臓から、赤い液体が溢れて、体が冷たくなっていく。

「だってあなたがいったんです」

もうやめてくれないか。
その顔で、その声で、そんな言葉を吐き出すのは。
わかっている。
しっているよ。

 どくどくどくと血を流しながら、水嶋はわらう。

「せんせいがいったんですよ」
「せんせいが」
「これは」

 水嶋はとっくにわかっていた。
 目の前でわらっているのは、月子ではない。
 月子ではなく。



「ゲームだって」



 月子の姿をした何かがわらう。
 水嶋はその顔を知っている。唇を歪めた、笑みにも似ているその表情。

 それは、とてもとても見覚えがあるものだった。

 月子が歪み、滲んで、形を変えて、最後にそこに立っていたのは。

やっぱりそうか。
そんな気持ちの悪い笑顔の持ち主は、僕の知ってる限り一人しか居ないよ。

 冷え切った体を赤く染めて、水嶋は今度こそ声を上げてわらった。



 何が可笑しいのかはわからないけど、水嶋はわらってわらってわらって、おまけにわらった。

 本当に何が可笑しいんだって話だよ。



 目の前に立ってるの、自分なのにね。

Game/ゲーム
title/ユグドラシル
100214
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