施錠の音が合図だった。後ろ髪に、耳に、頬に、鼻にキスを落とされ、ぎこちなくくちびるでこたえる。仲間だった時間が長すぎたせいなのか、クロロとのキスも性行為も何度重ねてもいまだ慣れない。

「んっ…」

靴を脱ぐ間も惜しいと言わんばかりにそれは続いた。クロロにしてはめずらしく性急な流れだった。わたしを壁に追い込みくちづけながらコートを脱ぐ。
口内にすべりこんでくる舌先にこたえるので精一杯だった。歯列のひとつひとつ、形を確かめるようになぞられる。その舌使いの丹念ないやらしさに覚えず息がもれる。

「んんっ」

重い身体がのしかかってきてバランスを崩す。冷えた玄関にもつれるように倒れこむ。後頭部はクロロの手に支えられていたおかげで打ちつけずにすんだ。けれどお世辞にも紳士的とはいえない倒され方だ。ぶつかった視線の奥で、いつも冷たく落ち着いた黒い瞳が今は慾情の色を帯びて光っていた。
文句のひとつやふたつぶつけてやろうと口を開いたところでまたくちびるを塞がれる。クロロに脱ぎ捨てられたコートのボタンがフローリングにぶつかりカチャリと鳴る。

「…んっ、…はぁ………まって、シャワー…」

半ば強引に膝を割って入ってくるクロロの身体に、すっかり力の抜けた四肢で抵抗を試みる。
クロロは動じなかった。それどころかいっそう身体を密着させてまたキスをしてくる。腹部にかたいものを押し当てられてはっとする。身体を強張らせたわたしに、鼻先をつけたままクロロは自嘲気味に笑った。少し困ったように。

「わかるだろう?待てない」

その笑顔の艶やかさに、思わず息をのむ。両手を挙げて降参を合図したかった。けれどクロロのくちびるがもう一度重なってきたので、かわりにそっと彼の背中に両手を回した。
161118
to be continued…?
タイトル:虫の息



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