「シャル」
「ん?なに?」
「したい」
「えー…、団長に相手してもらえば?」

気乗りしないのでそう言うと、ナマエはイヤイヤをするように首を横に振った。

「…シャルがいいの」
「建前はわかったよ。それで本音は?」
「クロロはね、出かけちゃったんだ。……ごめん。でもシャルとするの好き。これも本音だよ」

彼女は悪びれずに舌を出した。それがかわいらしいから厄介だ。

「……ほんとにナマエってさあ…」
「なあに?」

節操なし。そうののしってやろうと思ったけど、無邪気に首をかしげるナマエを見ていたらわざわざ自分の心の狭さを露呈するのもどうかと思えてきた。俺はため息をつきながらもパソコンを閉じて立ち上がり、ナマエの腰を抱き寄せた。

「…ま、ナマエはそのままでいいのか」
「なにそれ?」
「いいんだよ。わからなくて」


ナマエが恥じらいなく性行為に誘ってくるのも快楽に従順なのも、たぶん彼女が育った環境による。俺と同じ流星街出身だけど、親も家もあったナマエは、6歳のころから客を取らされて育ち、聞けば客だけでなく親の性欲処理の対象にまでされてきたらしい。行っても帰っても他人の欲にまみれる幼少期を過ごしてきたのに、俺たちのようにひねくれるどころか純真なところさえあるから不思議だ。
そんなふうに育った彼女はいわゆるセックス依存症で、蜘蛛でも外でもこうして見境なく男を誘う。でもそれを恥ずかしいことだなんて、彼女は毛ほども思っていない。お腹が空いたらご飯を食べるみたいに、したくなったら男を誘ってする。スーパーで食材を買って調理するのと同じレベル。おまけに男にイヤと言わせない愛らしい容姿でもって誰を誘っても断られるどころか歓迎されるから、ナマエの見事なまでの男性依存症はいっこうに治るきざしが見えない。
自分だってこうしてそれに加担している男のひとりであるのに、ときどき無性にそれを面白くないと思うのは、小さなころお気に入りのおもちゃに抱いた幼稚な独占欲みたいなものだ。フラフラ色んな男とするのやめれば、と何度も言いかけた台詞は妙なプライドが邪魔をして未だ口にできずにいる。


ベッドに上がるなり、自ら服のボタンに手をかけはじめたナマエを止める。

「いいよ。俺がするから」

こうしてベッドで向き合うたび見せつけられる、ナマエの男の手をわずらわせまいとする行動には、彼女がそういうコトに関してよく教育されているのをたびたび思い知らされた。

「シャルはやさしいね」

にこりと笑うナマエはどこからどう見ても純粋無垢な少女そのもので、到底自ら男をベッドに誘うような女には見えない。
細い肩をそっとシーツに押し倒す。

「それいつも言うけど、俺はべつにやさしくないよ」
「そうかな」

何か言いたげなくちびるをふさいで服の上から胸を揉みしだくとナマエは少し息を乱した。

「…あっ、…」

腰を撫でて足の付け根に触れるとビクリと身体を揺らした。胸の先端を舌で攻めながら内腿を撫でる。

「シャル、さわって」

ナマエは鼻にかかった声でねだった。素直すぎて、純粋な少女でも犯しているような気になる。馬鹿げた背徳感に熱が高ぶっていく。
淫らに潤っているそこに、二本の指を入れる。入り口でゆるゆると動かして、かきまぜていく。奥に突き立てるとナマエは快感に耐えるようにシーツを掴んだ。

「…っあ、…ふぁ、…」
「ナマエはここが好きなんだっけ?」

しらじらしくたずねる自分に内心苦笑する。ナマエのいいところなんて、聞かなくたって間違いなく全部わかっている。忘れたりしない。

「や、…っ…シャルっ…」

指を抜いて自身を入り口に当てがった。乱れた呼吸を整えながら放心しているナマエにキスをする。「入れるよ」とささやけば眼だけでうなずいた。

「…あっ…」




「…やっぱりやさしいと思うの、シャルは」
「またそれ?」

シーツの中で快楽の余韻をやり過ごしながら、惚けた表情でナマエはぽつりとつぶやく。

「だってわたしが誘ったら渋々だけどいつもちゃんと相手をしてくれるから」
「だから買いかぶりすぎだよ。やりたくなかったら付き合わないし」
「ーーそれって、シャルもわたしとしたいって、いつも思ってくれてるってこと?」
「ーーは?」

そういうことだよね?とうれしそうにささやくナマエの無邪気な笑顔に、不覚にもまた下半身が反応する。あーあ。これだからこの子はいやなんだ、やりづらくてしょうがない。
16/06/04



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