ポリジュース薬
クリスマス休暇、夕食の時間も過ぎ段々生徒たちが寝ていく時間になったが、ラザレスはドラコとともに静かにスリザリンの談話室で過ごしていた。しかしもうすぐ消灯時間だというのに、クラッブとゴイルがいつまで経っても、大広間から戻ってこなかった。
「アイツらいつまで食べてるつもりなんだ?」
「さぁ……でも、いつものことじゃないか」
「…連れ戻しに行ってくる」
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振りドラコを見送る。談話室からドラコの姿が消えればラザレスは手元の本に視線を戻した。
それから数分するとドラコはクラッブとゴイルを連れて談話室へと帰ってきた。ドラコの後ろにいる2人はなんだかそわそわしている。
僕の隣にドラコが座るのを見るとクラッブとゴイルは向かい側の椅子に腰掛けた。
「これは笑えるぞ」そう言いドラコが封筒から取り出したのは新聞紙の切り抜き。そういえば、ついさっきも見ていた気がする。
内容は簡単に言ってしまえばこうだ。
アーサー・ウィーズリーが学期始めの空飛ぶ車の件で尋問され、罰金を言い渡されたという。それに対してルシウスはウィーズリー氏の辞任を要求し、マグル保護法を廃棄するべきだと主張したらしい。
「ウィーズリーの連中の行動を見てみろ。ほんとに純血かどうか怪しいもんだ」
クラッブの顔が歪んだ。彼は腹が痛いのだと言った。
「ああ、それなら医務室に行け。あそこにいるけ…『被害者』の連中を、僕からだと言って蹴飛ばしてやれ」
クスクスと笑いながら言うドラコに向けて咳払いをすると、笑うのをやめた。
「それにしても、日刊預言者新聞が事件の報道をしていないとはね。きっとダンブルドアが口止めしてるんだろう。父上が言ってるよ、ダンブルドアが学校を最悪にしてるって」
「それは違う!」
珍しくゴイルが意義を答えた。ドラコの言葉を借りて言えばウスノロのゴイルが。
「なんだ、ダンブルドアよりもっと悪いのがいるって言うのか?」
聞かれた当の本人は下を向き、隣にいるクラッブは一生懸命横に首を振っている。
「…ハリー・ポッター」
「なるほどな、いいこと言うじゃないか。お偉いポッターめ!みんなヤツがスリザリンの継承者だと思ってる」
子分二人は顔を見合わせた。
「誰が糸を引いているか知っているんだろ?」
「だから知らないって。何度も言わせるな」ドラコは短く答えた。
「父上の話では、秘密の部屋が開かれたのは50年前で、開けた者の名前は言えないが追放されたそうだ。前に秘密の部屋が開かれた時は、"マグル生まれ"が1人死んだ。だから今回もあいつらの誰かが殺されるさ。僕としては――」
「ドラコ、それ以上はいけない」
ドラコが最後まで言い切る前に言葉を遮る。僕が、そして"彼ら"が怒る前に。
「クラッブ、腹が痛いんじゃなかった?ゴイル、医務室に連れて行ってあげなよ」
「あ、あぁ…」
僕に催促され、急いで談話室から出て行く2人をチラリと見た。
クラッブの髪が赤くなっていくのが見えたのだ。思えばいつもの彼らとは様子が違ったし、声も違って聞こえた。僕の勘が正しければ今目の前にいたのは、ポリジュース薬を飲んだハリーとロンだったのかもしれない。しかし、ハーマイオニーがいないことになる。
彼女がどうしたのかはわからないが、彼らがポリジュース薬を使って得た情報に満足できたかは、僕が知ることはないだろう。
2015.11/05
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