桜の記憶
キラキラとした瞳を町のあちこちへ向ける。
ダイアゴン横丁へ来るのは初めてというわけではないが、今日は少年――ラザレスにとって特別な日だった。(しかし来たのは久しぶりである)
右隣を一緒に歩くルシウスはそんなラザレスをはぐれない様にしっかりと見ていた。

「ルシウス、ラザレスをマダムマルキンの洋装店へ連れて行ってあげなさい」

「はい、父上」


ラザレスはアブラクサスとルシウスと一緒にホグワーツの入学準備をしにきていた。
ホグワーツの学用品を揃えるにはここが一番揃うのだから。


「ねぇルシウス、僕あとでアイスが食べたいなあ!」

「父上に頼めば買ってもらえるだろう、だから落ち着け」


浮き足立ったラザレスは繋いだルシウスの腕をブンブン振っていつも以上に元気だ。
顔はニコニコして「まだかなあ…!」と呟いている。

洋装店についてラザレスは台に乗せられサイズを測られ、ルシウスはそれを見ていた。


「坊ちゃんはマルフォイ家の方?」

「え?僕は違うよ、ルシウスはそうだけど。僕はモークリー家」

「おやまあ!モークリー家の方だったのかい」

「知ってるの?」

「有名じゃないか!優秀な魔法使いが沢山いる有名な貴族ですよ、残念なことに殆どが短命みたいだけどね。はい、終わりましたよ」

「うん、ありがとう」


やっぱりモークリー家は有名なんだ……!
スリザリンとモークリーの恥にならないようにしないと!


「さっルシウス、行こう!次は杖?」

「あぁ、杖はオリバンダーがいい。きっとラザレスに合う杖が見つかるよ」



* * *



僕に合う杖って本当に見つかるのかなあ……
かれこれ10分くらい色々な杖を振っている気がする。
中々自分に合う杖が見つからない。
店内は割れたガラスや、落ちた杖の箱で散らかっていた。


「ふうむ……少し特別な材質の物がいいのかもしれん」


そういいオリバンダーはまた奥に引っ込んで新しい杖を持ってきた。
出された杖は真っ白な杖だった。


「さて、サクラと一角獣のたてがみの34cm。いかがかな」


受け取った瞬間から感じる感覚。
今までとは明らかに違う……!


「僕の杖はこれだ!」


振った瞬間杖先から薄ピンクの花が散る。
僕はこの花に見覚えがある……?


「サクラか……綺麗だな」

「ルシウス、知ってるの?」

「本で見た程度だけどな。ジャパンで咲くものだそうだが」


ルシウスは椅子から立ち上がり、カウンターに7ガリオンを置く。


「サクラは非常に珍しい材質で不思議な力を生み出すと言われておる。大事に扱いなさい」

「ありがとう」



* * *



「ルシウス、僕前にサクラをどこかで見たことがある気がするんだ」

「? 外にはあまり出れないのにか?イギリスには咲かないと思うんだが……」

「うん。不思議だよね」


今度皆で本物の桜を見に行こう

2014.2/19
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