オナニー中に家族が部屋に入ってきた、というのはたまに聞く話だが、そんなことがあってたまるかと思っていた。神経を研ぎ澄ませて、部屋の外の気配や小さな足音も聞き逃さぬよう。家族にだったら通用したのかもしれないが、我らがボスにはそんなことなんの意味も成さなかった。
 散々罵られて脅されて笑い者にされるのだと思うと背筋が凍る心地だった。ネットで買ったオナホールをかぶせたままの下半身に、ボスはにやりと笑って、どうせオナホール使うんだったら俺が相手してやる。なんていうもんだからてっきり彼のホールをお借りできるのかと思って舞い上がった。それが一体どうしてこんなことに。
「ボス……っ、いてぇ。んなぐりぐりされても」
「注文つけんじゃねぇ。野郎のチンコなんか握ったことねぇんだよ」
 ボスはベッドに仰向けになっている俺の腰に跨がって、さきほどまでオナホールをかぶせていた俺のペニスをぐにぐにと揉んでいる。驚くほどに下手くそだ。ペニスを知らない処女並だ。そういえばこいつは滅多に自分で抜いたりなんかしねぇといっていたような気がする。
「なあ、穴貸してくれんじゃねぇのかぁ」
「笑わせんな。掘られる趣味はねぇし、本当は掘る趣味もねぇ」
「やっぱり掘るのかよ、俺を!」
「喜べ」
「やめろ、いてぇ、切れる!」
 必死にボスを引きはがそうとする。シーツはぐちゃぐちゃ、なのに色気なんてありゃしない。俺の抵抗なんてものともせずにボスは勃起している自分のペニスを俺のケツに押しつけた。やわらかな皮膚がひっぱられる。無理に決まってるだろ、座薬だって入れたことねぇんだぜ。
「入らねぇ」
「そりゃそうだ。普通アナル使うには相応の準備がいるんだぁ」
 ボスは眉を寄せてふてくされた。かわいいかもしれないと思ってしまった自分が気持ち悪い。ふと冷静になって、男のチンコを触って勃起したボスのソレに視点を合わせる。
「興奮したのか、あんた」
 ボスは少し考えてから、聞いてもいないのに恥ずかしいことをいった。
「てめぇが俺に突っ込まれて喘ぐところを想像したら勃った」
 オナホールを使う俺といい勝負の変態だ。


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