「とても不思議だ」
 たっぷりとしたフリルをかき分けて、スカートをめくり上げた紅子さんがいった。そりゃあそうでしょうと僕は返す。そりゃあそうでしょう、俗にロリータファッションと呼ばれるレースとフリルでできたようなワンピースの下には、まぎれもない男のからだがあるのだから。
「けれど興奮する」
 紅子さんは声が跳ねるようにいうと、太ももにひやりと彼女の手の感触。僕のペニスはとてもじゃないが少しも反応しなかった。そのあと紅子さんにくわえられてもだ。
 僕はぱっくりと足を開いて床に座り込み、その間にしゃがみこむ紅子さんのちょうど腰の辺りを見つめていた。細すぎるでもなく太いわけでもない、ちょうどいい具合にくびれたきれいな腰だ。
「君は女を抱けないのかな」
「そういうわけではないですけど……、紅子さんが僕で遊んでるから、そういう気にならないだけです」
 僕は心が乙女なのではない。着たい服を着ているだけに過ぎず、それがたまたまふりふりした服だっただけのことなので、世間一般の言葉を使えば女装癖のある変態でいい。
 彼女は本気で興奮しているわけではないのだ。彼女はそのとおり、僕で遊んでいる。昨日の夜はふたりでお酒を飲みすぎて、そのまま僕の部屋で眠ってしまった。昼すぎに目が覚めて、紅子さんが買い物に付き合ってくれというので、僕はつい先ほどシャワーを浴びて着替えを済ませたばかりだ。
 男の裸体を真っ白なレースとフリルが隠していくのを楽しそうに見ていた紅子さんは、僕にからだを見せてくれといった。ここでいうからだとは男の象徴なのだ。
「くわえても勃起しないなら、わたしが脱いでも同じ?」
 フリルの間から紅子さんの顔が覗いた。唇が濡れている。僕は手を伸ばして、彼女の小さな顔を引き寄せた。
 そのあとは紅子さんのすきなように抱いてあげた。ソファの上に寝かせた彼女の上にまたがって、大きくふくらんだスカートを揺らしながら、僕は彼女の肌に触れた。紅子さんの皮膚はやわらかくて、若く美しく見えはしても、中年女性独特の肌のやわらかさがあった。
 僕のペニスはきっと女の膣と同じだ。セックスをしたいと思えば勃起するし、特にしたくなければ勃起しない。挿入からしばらくして腰の動きを速めたら、まだだめだと彼女が足を僕の腰に巻きつけた。僕が冗談で下唇を噛みしめると紅子さんは楽しそうにほほえんだ。
「紅子さん、恋人をつくったらいいのに」
「必要ない。きみがいるからね」
「僕は恋人ではないんですか」
「どうして?きみがわたしをきらっているのに?」
 僕は瞬く間に射精した。紅子さんの目が、僕を軽蔑したように鋭かったからだ。


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