海にいきたいとルキアがいったので、綿のワンピースにつばの広い大きな帽子をかぶり、リュックサックを背負った彼女を連れて駅に向かっていた。ぎらぎらとした日差しが容赦なく肌に照りつける。アスファルトの先はゆらゆらと揺れていて、このままとけてしまいそうに見えた。
 数歩うしろを歩いているルキアを振り返ると、帽子の中で汗をぬぐっている。暑いのだろう。俺だってとても暑い。
「なにもこんな暑い日に海なんかいかなくていいだろ」
「なんだ、いまさら。貴様が退屈そうだったから誘ってやったのに」
「あいかわらず偉そうだな、おまえは」
「アイスを買おう」
 ちょうどコンビニの前を通りかかったときだった。ルキアはすうっと自動ドアに吸い込まれていき、ためいきをつきながら、自分もあとに続いた。冷房のおかげですぐに汗が冷えて気分も落ち着いてきたところで、レジからルキアが呼ぶ。
「一護、金を払ってくれ」
 そのくせレジに置いているのはビニールに入ったかき氷をひとつ。あきれた!

 結局海にいくのはやめようということになった。コンビニを出てすぐのところにあった公園のベンチに座り、ふたりしてかき氷をしゃりしゃり食べて、さらさらと葉の揺れる音を聞いているうち、海なんてどうでもよくなってしまったからだ。
「海にいってたって、どうせ人が多くて泳げねえよ」
 二袋めのかき氷を開けながらいった。俺がみぞれといちごを迷っているとき、どっちも買えばいいとルキアがいったのでそのとおりにしたのだった。もちろんルキアにもふたつ買ってやった。そうしなければあとで俺のぶんを取られてしまうのだ。ルキアはまだ一袋めのみぞれを半分ほどしか食べていない。
「ルキア、みぞれ似合うな」
「一護はいちごが似合うな」
 嫌味ったらしくいわれて気がつかなかったが、ルキアは喜んでいたらしい。帰り道、別のコンビニの前を通りかかったときも、ルキアはみぞれがほしいといって立ち止まった。
 レジにはいちごとみぞれが一袋ずつ。俺はなんだかうれしかった。


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