カーテンのほんのわずかな隙間から外灯のあかりが照らしこんで、いいようがないほどにいらいらしていた。それに気づかない、気づこうともしない……、男がわたしの上に跨り、ふたり分の重みで安いベッドがぎしりと鳴る。
「もう寝るわ」
「お願い、一回だけ。今日はがまんできない」
「あんたの一回は長いの。だからいや」
「鈍ちゃんが早漏のくせに女抱くなっつったから俺、だいぶ、鍛えたのに……。でも大丈夫、すぐ出そうと思えば出せるから」
「とにかく今日はいや」
「寝てていい。喘がなくてもいいから、お願い」
 いいながら経一はわたしの下着をほとんど無理やりにはぎとって、すきなように愛撫をしてすきなようにペニスをこすりつけた。熱い息がちょうど下腹部にかかる。背筋がぞくぞくして、このまますきなようにさせるのもなんだかおもしろくないなあと思い、伸ばしていた足をそっと上げて、股の間に顔を埋めている経一の後頭部を思いきり蹴り飛ばした。
「いってー……」
 頭を抱えて床に転がる経一。わたしはそれをあおむけのまま見下ろして、それでも治まらないいら立ちを持て余していた。
「今日は素足なだけマシだけどよ、いてえよ鈍ちゃん」
 経一は涙をぬぐいながらベッドによじ上り、さらに硬くさせたペニスをわたしのふとももにぐっと押しつけた。
「変態」
「うん、鈍ちゃんにだけだよ。俺の女王様だもん」
「こんなことになる予定じゃなかったのにな……。わたし、ふつうのお嫁さんになるのが小さいころの夢だったのよ」
「叶えてやるよ」
「ふつうのお嫁さんは旦那を蹴らないわ。セックスを拒まないし」
「ねえ鈍ちゃん、俺、鈍ちゃんと話してるだけでイケそう。安いエロ漫画みてーだ、でも、ほら、」
 小さく経一が唸って、わたしの太ももに生温かい精液がかかった。わたしは悲しくなる。大型犬のようにまとわりついてくる様がうっとおしいけれどもかわいらしくて、それなのにわたしに対してだけなのかそういう性癖なのかは知らないけれど、もう変態以外いいようのないほどの、マゾヒスト。
「興奮でイケるなんて女の子みたいだわ、情けない」
 わたしがいうと、彼はエコだよなんてわけのわからないことをいった。少しかわいそうだと思ったのでつま先でペニスをなでてやると、またすぐに芯を持った。経一はゆっくりとわたしの上に覆いかぶさって、ほんとうに女のように、何度もわたしの名前を呼んだ。
「鈍ちゃん、鈍ちゃん……、鈍ちゃん」
 せつない、かすれた声。わたしは毎夜同じことを思う。セックスをしながらどうしてこんなにさみしくなるのだろう、悲しくなるのだろう。朝を迎えるのがとてもこわい。


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