「大兄貴、あんたはさ、」
そのあとの言葉は聞きとれなかった。ぐちゃぐちゃになった布団の上で蛇骨はふうふうと息を吐いて、声か音かもわからない、ノイズのような音を咽から漏らしている。意識しているのかいないのか知らないが、蛇骨が腰を引いたので、俺はすぐに気味が悪いほどに白くて細い太ももを力任せにひっぱって、がつがつと彼のからだに自分のからだをぶつけるのを繰り返す。俺のペニスが蛇骨の穴に何度も出たり入ったりを繰り返す。蛇骨の下半身は痣だらけになっていた。
「ア、ああ、兄貴、兄貴、もっと、もっとしていいよ」
蛇骨がわらう。もっとって、もっとしたら、おまえはもう死ぬかもしんねえぞ。そういうと、兄貴に殺されるなら本望だといわれた。
「もっと、したいんだろ、兄貴」
起こしていた体を伏せて、蛇骨の首筋をなめた。蛇骨はしゃべりながら抱かれるのがすきだという。自分が乗るというので、腰に手を回して彼を起こしながら、自分はそのままうしろに倒れて湿った布団に寝そべる。こうした形で蛇骨に見下されるのはとてもすきだ。蛇骨は女のように目を閉じてうつむいたりなんてしないから、犯されているような気分になる。俺の顔を見て喘いでいたかと思えば宙を見つめてエロい顔で息を吐いたりする。ときどき鋭くなる目つきに、背筋がぞくぞくした。
もっとしてやるつもりだったのに、蛇骨が俺の上であんまり絶妙に動くもんだから、あっという間にいっちまった。
「俺はおまえになら掘られてもいいよ」
煙管をふかしている蛇骨の隣で膝を立てて座っていた俺は、ぽつりとそんなことをいった。蛇骨は驚くだろうと思ったが、一瞬目を丸くしただけで、あとはいつものようにあっけらかんとして俺にいう。
「大兄貴はネコの気もあるだろ?乗られるとかわいくなっちまうもんな。いいよ、今度、俺が兄貴抱いてやるよ。それより、そんな情けない座り方しないでくれよ」
立てていた膝を開かれて、その上に蛇骨が乗る。よいしょ、よいしょ。羽織っていただけの着物の間からなまぐさいにおいがする。
「なんか今日の兄貴、かわいいなあ」
煙管の先を胸に押しつけられ、小さな火傷になったそこをなめられる。
「蛇骨、おまえは俺とも、死姦してえのか」
「したくねえよ。兄貴が死ぬのはいやだよ。俺は兄貴がいないと生きていけねえよ」
「死姦が一番気持ちいいんだろ?」
「ソレとコレとは別だなー。死姦っていうか、やりながら殺すのもいいけど、兄貴とやるのもいい。コレは他の男とはだめだ、相性が合わねえし、同じ奴と二回も三回もやりたくねえ」
わかる、兄貴は特別なんだ。そういったあと、蛇骨はまた俺を布団に押し倒した。全身をうすい舌で愛撫されながら俺はその言葉を思う。ことば自体は口説き文句のはずなのに、俺には呪いのように聞こえた。