ずっと一緒に歩こうね、ずっと一緒にご飯食べようね、ずっと一緒に遊ぼうね、つまり、ずっと離れないでいようね!
そんなことが実際に叶うわけがないなんて、知っていた。子どものころは意味もなく彼女の言葉にうんうんうなずいて――実際何を言っているかはわからなかった、でも雰囲気で会話は成り立っていたんだ――。俺だって彼女と離れる日が来るなんて想像もしていなかったから。日本語を勉強しはじめたころ、彼女は俺に冒頭で述べたせりふを懸命に話したのだけれど、そのときの俺はもう子どもじゃなくて、けれどまたうんうんうなずいて、彼女の細い体をぎゅっと抱きしめて泣いたのだった。ずっと一緒にいたいよ、俺が涙混じりにそう言うと彼女は俺の頭をなでながら「だいじょうぶ」とつぶやいた。彼女はだいじょうぶの意味を理解していたんだろうか。
「ランボ、お皿取って」
「こないだイーピン、もうお皿には触るなって言ったじゃないか!」
「ランボがお皿をブーメランにして遊んだりするからだよ。ほら、早く」
彼女の日本語が上達するにつれ、「だいじょうぶ」の意味を理解できていなかったのは自分のほうだったことに気がついた。ああ、ぼくときみはたぶんきっとだいじょうぶだ。