ラムとけんかをした。いつものことだ。俺がほかの女の子を追いかけているところを見つけたラムが怒って俺に電撃をくらわせる、いつものパターンだ、と、思っている。
 六限めの授業は体育だった。男子は校庭で野球、女子は体育館でバレーボールだったらしい。授業が終わったあとの掃除時間に、体操服にブルマを履いたままのしのぶを下足室で見つけたので、俺はそっと近づいて彼女のふとももをなでた。ラムがしのぶと同じ掃除場所だったことをすっかり忘れていたのだ。
 しのぶにひっぱたかれ、その衝撃で顔がちょうど真横を向いたとき、靴箱と靴箱の間にほうきを持って立ち、一直線に俺をにらむラムの姿が見えた。そうして次に俺を襲うであろう電撃に耐えるべく、瞬時にからだをこわばらせたのだが、今日はどうしてかからだがしびれることはなかった。そのかわりにラムは俺をにらんだまま小さく口を開いた。
「もういい、何度いってもわかってくれないのはただのばかだっちゃ」
 その日は帰りのホームルーム中も一切俺のほうを見なかったし、帰り道などはすこしも姿を見かけなかった。そのうちいきなり背後から電撃でもくらわせられるのだ。ラムは我慢もできなければ嘘もつけない、そんなやつだ。
 ところが夕飯の時間になってもラムは帰ってこない。テンに聞いても知らんとしかいわなかった。掃除時間のことが気にかかっていたので、夕飯に手をつけるまえに家を出た。公園でゆれているブランコを見つける。ラムがこいでいた。
「近づかんほうがいいか?」
「べつに」
 スカートのすそをはたはたいわせながらブランコをこぐラムは、めずらしく落ち込んでいるようで、むりやり連れて帰っていいものかわからなかった。特になにも考えずに近づいてしまったことを俺はすぐに後悔する。
「ダーリンがほかの女の足をさわろうとだきついていようと、うちは平気なふりをしてるしかないっちゃ。だって、どうせダーリンはやめてくれないんだから。いくら電撃を浴びせても、いくらやめろっていっても、無駄だっちゃ。うち、もうつかれた」
 ラムのことばを聞いたあと、俺はラムのまえに立ったまましばらく声を出さずに泣いていた。ぐずぐず鼻をすすっていると、ラムの手が伸びてきて、俺の頬をなでるようにして涙をこする。ブランコの鎖を握っていたせいだろう、鉄のさびたにおいがする。
「わかってるみたいっちゃね。ばいばい、ダーリン」
 俺はいつから、ラムがすきだったのだろう。


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