いつものように改札前で待ち伏せていると、ネリエルとオレンジ頭の男子高校生が並んで現れた。
「おい、ネル」
緑色のウェーブを纏めもせずにバサバサと靡かせ、ださいプリントワンピースを身につけた女は不愉快そうにオレに視線を合わせた。
「なんだそのガキ」
「一護はガキじゃないわ」
「じゃあなんでイチゴと一緒なんだよ」
今日は帰りが遅いと思っていたら高校生連れて歩いてたなんて話があるか?突っかかるとネルは一昨年から見覚えのあるカゴバッグを肘に掛け、ヘンな名前のガキの腕にひっついた。
「私が一護を大好きだから」
わななくオレにノイトラは嫌いと舌を出した。
「んだと、もっぺん言ってみろアバズレ」
「そういうのが嫌だって言ってるの」
ICカードを改札機に当てて逃げる。オレも後を追おうとしたがオレンジが前に立った。
「邪魔すんな、退け」
「オレだってしたくねぇよ。けどネルがアンタのこと嫌がってんだ」
ネルに言われるならまだしも青臭いガキに言われるのはムカつく。
「嫌いなら放っておいてやってくれ」
それだけ言うとガキは来た道を戻って行った。ネルの姿はとおになく、今頃電車からイチゴにメールしてるんだろうと益々苛ついた。
オレとネルの関係はただの同級生だ。中学高校と同じだったが大学で違った。アイツが直前になって志望校を変えたからだ。
携帯電話はオレに知れたと分かると解約したしメールアドレスだけ変えることも繰り返した。
初めの頃は冷たかったネルだが徐々にオレを不気味がるようになり、そのうち必死に逃げ回るようになった。もっとそうなればいいと追いかけた。待ち伏せもそのひとつだったのだが。
高校生が同伴するようになってから帰宅時間にはムラができるようになった。早かったり何時間も遅かったりした。どうもガキは帰宅部らしい。
「ヤッてんだろ」
ある日遅い時間に来たネルたちにそう言った。セックスして来たんだろう。二人とも見た目はそれなりにいい。
「何を」
「すっとぼけんなよ」
ネルは無視して改札を通り、残ったイチゴはヘッドフォンを当ててやはりオレを無視して帰る。
ふとイチゴを付けてみようと思った。ネルがこのガキのどこに惹かれたのか知りたくなったのだ。
町中でもオレンジは目立つ。駅前通りで誰かに気付いて手を挙げると制服姿の女が駆け寄ってきた。よく見るとウルキオラの女じゃねぇか。本人は否定するが、どう見ても惚れてる。その相手がネギを抱えながら嬉しそうにイチゴに話しかけている。
すぐに別れてまた歩き出す。このまま家に帰るのかそれとも別の女に会うのかと着いていくと同じ制服の小柄な女と合流した。次から次に女と会うなんてとんだタラシだな。こんな野郎がネルとヤッてんのかと思うと一発くらい殴らないと気が済まない。
ヘッドフォンを首に掛けて雑談している後ろ姿を憎しみながら見ていると、どうもこの二人は恋人ではないようだ。高校生によくある周囲を苛つかせるようなことを一切せず、一定の距離を保っている。そういえばウルキオラの女も雑談だけであっさり別れていた。
そう気付くとただの便利なヤツにしか見えなくなってきた。もしかしたらはっきりとした相手がいないせいで童貞かもしれない。
途端にどうでもよくなった。ネルの男なら知りたいがお友達に興味はない。
「あ?」
「あ、?」
次の日改札に現れたのは毛玉が付いたピンクのパンツをはいたネルひとりだった。
「ナイトはどうした」
「一護は用事」
退屈そうに答える。便利に使っているわりにお気に入りのようだ。
「…お前よぉ」
ネルはびくりと肩を震わせて身構える。オレに意地悪をされてばかりいるから仕方ないし、その反応をさせたくて嫌がらせをしていたのだが、そのつもりがないのに警戒されるのは、矛盾すると分かっていても虚しい。
「あのガキと何してんだ、いつも」
「一護?別に…買い物付き合ったりお茶したり…」
「それするぞ」
「え?」
振り払われないようしっかりカゴバッグを掴み、駅前通りに向かう。
「ちょっと、やだ、ノイトラ」
聞いてやるつもりはない。オレを誰にでも優しくする便利な男なんかと一緒にすんな。


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