生活用品の買出しはいつもナミがしている。じゃんけんで負けた男がひとり、荷物持ちとして同行するのだけれど、そういえば自分が負けたのはいつが最後だったかなとぼんやり考えた。ナミとふたりきりでぶらぶらと買い物をするのはとてもひさしぶりだ。
「靴を買ってあげましょうか」
 彼女の口からそんなことが出るのはなにか企みがあるときと決まっていたので、目的はなんだと聞くとなにもないわと返されて、次は彼女の体調を心配してしまった。熱でもあるのか、どこか悪いんじゃないか。誕生日にもものを買ってくれないのに。
「あの赤いのがあんたに似合いそうだから。いらないならいいのよ」
 大きなガラスの窓のむこうにはスニーカーがずらりと並んでいた。靴屋らしい。そのなかのひとつ、明るい赤の一足を指さしてナミがいう。
「いや、いる、いる」
「大切に履きなさいよね。やぶらないで」
「うん」
 なくすといけないからとスニーカーが入った紙袋はナミがさげた。首のうしろがこそばゆく感じて、買出しのリストを確認するナミに声をかける。自分で持つよというといいっていってるでしょと高い声で叱られた。
「ありがとうっていうタイミングがないだろ」
「すでにいい逃してるわよ」
「そうか、しょうがねえな。いまいうよ。ありがとう!」
「どういたしまして。トイレットペーパーはどこに売ってるのかしら」
 煉瓦の赤い街並みが美しいその街はとても彼女に似合うと思った。白い建物の街もいいけれど。サンダルをぺたぺたいわせながらトイレットペーパーを探すナミのあとをついて、ふわふわ揺れるオレンジに目を細める。
 スニーカーなんてぶかぶかして暑苦しくて、好んで履きはしないけれど、早くそれにひもを通したくてしかたなかった。


「いつもどおり、男ひとりはわたしのお供。サンジくんは食料の買出し。ほかは自由行動よ」
 ダイニングに集まってそれぞれ小遣いを渡されたあと、恒例のじゃんけんをした。結局スニーカーは汚してしまうのがもったいなくて一度も履いていない。ナミはそれでもいいといった。
「ルフィ、おまえの負けだ。なんで遅出ししたくせに負けるんだか」


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