近所のスクランブル交差点で宇宙人が死んでいたらしい。


目の前でルービックキューブを黙々とやっていたはずの“六面”が、前置きもなくそう言った。

いきなりのことに僕は、ペットボトルに口をつけようとした寸前のところで一時停止する。



「丁度、横断歩道がばってんになってる所にさ、こう、うつ伏せになって倒れてたんだと。あそこの道路一帯も、もうすぐ閉鎖するって言われてたから、宇宙人も安心して死に来たんだろうなあ。宇宙には空間が無いから、死ぬのにも苦労しそうだ。死体も分解されないし、やっぱり死んだ後は火葬だよな。火葬」



抑揚もなく、息つぎもなく、ルービックキューブから目を離しもせずに、六面は続けて発言した。

それからは、沈黙。

部屋の中ではルービックキューブを捻る音だけが反響している。

無意識的にペットボトルが傾いていたようで、どばりとコーラが顎に零れたところで、僕は意識を引き戻した。



「うおう!」



六面はこちらを見ない。
青と黄の面が完成したそれをまじまじと眺めてから、僕なんてまるでいないかのように、また捻る作業を再開する。

僕はべたつく顎を右手で拭ってから、顔を渋くしてペットボトルのキャップを締めた。



「んな阿呆な」



六面の前にどかりと座って僕はペットボトルを頭の上に乗せてやった。


六面が小さく身震いする。

僕も一寸遅れて身震いした。






10.08.**






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