彼曰く、蝉の腹は美味いらしい。

ばりばりと嫌な音を立てながらそれを貪る彼を見て、僕は友人の言葉を思い出した。


土で汚れた両羽を摘み、丁寧に引きちぎる。

次に逃げようと暴れまわる六本の足を折ってから、彼はコンセントを抜く時のように無表情のまま腹部から頭部を分離させた。

本日三匹目のそれに哀れみを感じながらも、頭の大半が興味で占められていた僕は、彼に美味いかと聞いた。

彼は美味いと返答した。
即答だった。


静寂が僕達の間に居座って、とうとう彼が六匹目に突入しようとした頃、僕はようやく沈黙を追い出すことを決心した。


なあ、その頭の方でいいから、一つ僕に分けてくれないか。


彼の右手に掴まれた頭部を指示して言えば、彼は変わらずの無表情で、僕に頭部を投げ寄こした。




「いいよ、どうせ捨てるから」






10.08.**





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