私は命を掻き出している。


今もこうやって器具を駆使し、両手を忙しなく動かしているのは、私が彼女の主治医だからという理由の他にない。

黄色い悪魔が蔓延る道に、手持ちが長いスプーンを滑らせながら、私は死体のように眠る彼女を膣越しに睨んだ。


罪悪感は既にない。
彼女に対しても、道の先にいる胎児に対しても、寧ろ怒りと軽い憐れみしか感じられず、私は躊躇なく目の前の息をした肉塊を寝床から引き剥がした。

反動で多少揺れても、器具のお陰で膣が閉じることはない。


だけれども、私は一変して、確実に怯えていた。

何回目だろうが相手が娼婦だろうが、次の行為を私がすると思うだけで、スプーンに映る歪曲した自分がカタカタと揺れるのだ。



「先生」



助手の声がする。
急かされている。
見下ろされている。
毎度のことだ。

薄く溜め息を着く音が聞こえて、私は歪んだ自分を握り隠した。


膣の中で鈍く光沢するただの肉塊を黙々と引きずり出し、私は今日もそれをゴミ箱へと捨てる。






10.08.**






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