似ていないように見えるけれど、根本的には似ているのだ、と彼女は言った。 いつも無表情のまま感情を伝える彼女だが、この時だけは、本当の無表情で言っているように見えた。 階段を下りながら、僕と彼女は沈黙を守る。 僕は先に、彼女は後から、合わない足音を響かせて一階へと下りていた。 絵画を鑑賞している時にふと見た彼女は、相変わらずの無表情だったけれど、先程の彼女の言葉を聞いてから思い返してみれば、彼女は確かに感情のある動きをしていた。 僕は階段を下りきるまで後一段、というところで足を止めた。 それと同時に、二人分の足音も消える。 ゆっくりと振り返れば、三段先に彼女が無表情のまま、立っていた。 彼女の口は閉じられている。 僕は沈黙を打開した。 「君は、感情があるように見せているだけだったのだね」 彼女は何も言わない。 動かない。 階段を下りることも、なかった。 僕は再度前を向いて、最後の一段を、下りた。 一人で、来客用の椅子に深々と座る。 僕は見てきた絵を頭の中で鑑賞しながら、彼女も絵の一部だったのだと、ようやく気が付いた。 10.11.06 |