ごめんね寂しいと君は叫んでたのに




頭の中が、ぐちゃぐちゃに散らかした部屋のようだった。

どこから手を着ければ良いのかがわからず、整理することが叶わない。

端から1つずつ何とかするしかない。

それはわかっていても、なかなか進まない。

重いため息を吐き出した数は、数えきれない。

オズは走りたくなる衝動を必死に抑えていた。

それは、隣(やや後ろだが)にいるアリスを思ってのこと。

それでも徐々に速くなっている足に、気づいていない。


「……オズ」


彼女が彼の名前を呼ぶ。

控え目に、それでもはっきりと。

確かに聞こえているはずなのに、オズは返事をしなかった。

聞こえているけれど、届いていない。


「オズっ!」


右腕を力強く掴まれ、ようやくその顔を向けた。


「どうしたの、アリス」

「それは私の台詞だ」

「ん?」


プイッと膨れたアリスは何も言わず、ただオズを掴む手に力を込めた。

力を入れているだけが理由ではないだろう。

アリスの手が、腕が、肩が、体が、震えていた。

空いたほうの手を伸ばすが、触れることができなかった。



「……アリス」

「何をバカみたいに考えているのだ」

「バカみたい、か」


乾いた笑い声がオズの口からこぼれ落ちた。

考えて解決できること……ではないはずだ。

確かに考えることも必要だが、考えるよりも大切なことがある。

それなのに、頭は選択の先を、不快な未来を映し出していた。

グルグル回る映像は、ため息のモトにしかならない。


「また」

「え?」

「また、余計なことを考えているだろ。それは、私よりも大事なことなのか?」

「アリス……」


泣き出してしまいそうな顔だった。

その時、オズはようやく自分の足で大地に立っているのだと気づいた。

ふわふわと漂っていたように思っていたが、確かにここに立っていた。

彼女はずっと側にいてくれたのだと気づいた。


「アリス、ごめん」

「何がだ」

「ごめん……よりは、ありがとう。かな」

「オズ、腹が減ったぞ」


ふわりと花が咲いた。

アリスには、こんな顔がよく似合う。

似合うというより、オズが好きなのだ。

彼女の笑っている顔が。


「うん。オレも」

「なら、何か食べに行こう。空腹だと悪いことばかり考えると聞いたぞ」

「そうだね」


3歩先に進んで、アリスは振り返った。

差し出された右手は、まるで太陽のようだ。

一瞬の眩しさに目を瞑り、柔らかい彼女の手に重ねた。





ごめんね寂しいと
君は叫んでたのに





title thanks『啼けない小鳥のアリエッタ』



2010/10/03
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