どうしてわかるの?隠してたのに




※未プレイ。

※初書き。






台所のシンクの側に置かれた低めの丸椅子。

使い込まれた椅子。

そこに無理矢理座らされたルカは、事情がわからず窺うような視線でイリアを見つめた。


「いい?」

「えと……何が?」


ニヤリッと音がつきそうな企みの笑みを見せたイリア。

彼女のソレが何を意味するのかまったく理解できず、ルカはやや間抜けな顔で素直に尋ねた。


「わかるでしょ。場所と時間を考えなさい」


ピシリと突きつけられた人差し指。

絆創膏が巻かれていた。

それも気になったが、ルカは彼女の言葉を考える。

場所は台所。

時間は……。

ルカは時計を探して室内を見回すが、この部屋にはなかった。

お昼ご飯を食べて2時間くらい経っただろうか。

ということは。


「間違ってたらゴメン。もしかして、おやつに誘ってくれた?」

「気づくのが遅い! これだからお子ちゃまは……」


自信のない正解(こたえ)を、消えそうな声で言ったルカ。

そんな彼に対してイリアは、やれやれと頭を振る。



(素直にお茶に誘ったとでも言ってくれたらいいのに……)



口に出したら倍くらい何か言われそうだったから、心の中へ留めておいた。


「それで、最初の『いい?』って……」

「覚悟はいい? ってこと」

「覚悟!?」


お茶を飲むのに、覚悟など必要だっただろうか。

というか、本当はお茶に誘われたわけではないのだろうか。

グルグルとルカの頭を様々な疑問が回っていた。


「ちょっと、あたしの話聞いてんの!?」

「あ、ごめん……」

「このあたしが、あんたのために、誰も見たことがないようなお菓子を作ってあげたのよ!」


もしかして、先ほどの絆創膏はその過程だろうか。

怪我をしながら作ってくれたソレに胸が高鳴る。

……が、『覚悟』という単語が邪魔するようにちらついた。


「あの、さ、イリア」

「はい。召し上がれ」


目の前に出されたのは、耐熱皿。

中身はグラタンのようにも見える。

チーズの焦げた匂いと、砂糖、あとは甘酸っぱい何かの果実。

匂いからは、何も危険な感じはしない。

だが、コレを出した時のイリアの表情が強く焼きついていた。

ニシシッと笑うようなカオ。


「い、いただきます……」


ルカが何をするべきかは決まっている。

これしか道はない。

最後にもう一度見たイリアの顔は、悪戯を仕掛けた子どものような企む笑みと、ほんのわずかな乙女心が見え隠れしたものだった。

スプーンで掬って観察する前に口の中へ。

何が起きても死にはしないだろうと。


「ノーリアクションってどういう意味?」


無言で動きを止めたルカをイリアは10秒待った。


「あ、えと……」


一言で感想を述べるならば、『複雑な味』だ。

美味くも不味くもなく、可も不可もない。

もう一口食べたいかと問われたら悩む味。

さすがに素直にこんなことを言えないが。

少し迷ってルカは答えた。


「変化球すぎる愛情だったよ」


イリアの顔が赤く染まるのと、彼女が武器を構えたのは、ほぼ同時だった。





どうしてわかるの?
隠してたのに





title thanks『瞑目』



2010/09/15
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