変わらない想い




青い空を二羽の名も知らぬ鳥が飛んでいく。

良く言えば平和な、悪く言えば退屈な日常だった。

今日は特別暇だ。

時間を持て余したルーティは、暇つぶしにスタンに会いに行く。


「スタン、いるー?」


多分ここだろうと予想した場所に彼はいた。

そして、これも予想通りだが気持ち良さそうに眠っていた。

くかーとか、すこーとか、熟睡を表す文字が見えてくる気がした。


「あんたは幸せそうね」


頬をぷにぷにつつけば、邪魔するなと言うように手で払われた。


「おい、こら、スタン」


ちょっと乱暴な、けれど不快な表情ではなく、ルーティは夢の中にいる彼に怒るように言った。

当然届くはずなどなく、スタンは変わらず幸せそうに眠っている。

暫くどうしようかと考えたルーティは、寝ているスタンの隣に座った。

どこにいても退屈なら、スタンの寝顔を見ているのも悪くない。

普段の言動もそうだが、こうして眠っている彼は幼く見える。

無邪気な子どものようだ。


「こんな大きな子どもは大変だけどね」


自分の足を台に、頬杖をつく。

そして、幸せそうなスタンから青い空へと視線を上げた。

気持ちよく晴れ渡った空。

穏やかな陽光。

邪魔することなく通り過ぎていく風。

確かに眠たくなる。

はわぁ……と小さな欠伸をしたルーティの瞳は、睡眠までの秒読みをしていた。

特に予定はない。

少しくらい眠っても構わないだろう。

スタンによりかかるようにして、ルーティは完全に目を閉じた。



ふわふわと夢の世界を漂っていた意識が、現実へと導かれる。

随分眠っていたような気がした。


「おはよう、ルーティ」

「おはよ……え?」


目を開けたルーティを迎えたのは、スタンの笑顔。

向かい合う形。

いや、スタンの向こう側に空と木が見える。

膝枕されていると気づいたルーティは飛び起き、彼から離れた。


「あ、ああ、あ、あんた、何してんのよ!!」

「何って……。目が覚めたら、ルーティがココで寝てたから……」


スタンは自分の太股、先ほどルーティが枕にしていた部分を指した。

何と言葉を返すべきかと悩み、口をパクパク無意味に開閉させた。

その様が面白かったようで、スタンは大きな声で笑う。


「スーターンー」

「ごめんごめん。何かさ、ルーティが俺の側で寝てくれることなんてなかったから」

「一生の不覚だわ……」


頭を押さえて、力なく振った。

寝顔を見られたことが恥ずかしいというより、何というか悔しい。


「そんなに落ち込むなよな。また一緒に寝ればいいだろ」

「は? 何であたしがあんたと寝なきゃなんないの?」

「この場所、昼寝には最高だからな」


うんうんと頷き、自慢げに語る。

何故だろう。

ルーティは自分に問いかける。

スタンと一緒にいると、話をしていると、悩んでいたことが些細なことに思える。

ルーティに向けられる笑顔をずっと大切にしたいと思う。

これから先も共に歩いて行きたくなる。


「……答えはとっくに出てるのよね」

「ん? 何か言ったか?」

「べっつにー。昼寝に付き合ってあげてもいいけど、条件があるわ」

「……条件?」


身構えたスタンに最高の笑みを向けた。





変わらない想い





title thanks『瞑目』



2010/09/15
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