特別相談係



「嬢ちゃん、元気ないね」

「あ、レイヴン。そんなこと、ありませんよ」


力なく浮かぶ笑みを見せられ、レイヴンは大げさに頭を振った。


「当ててあげようか? 青年のこと、考えてた」


バッと上がった顔。

綺麗な緑が揺れた。

動揺を綺麗に映し、ひきつった口元が笑みを作る。


「そ、そんなことないです」

「そうかな〜」


彼女と正反対な意地悪な笑みを見せれば、エステルは黙ってしまった。

親友に呼び出され、ユーリが仲間達と別れたのが、二日前。

その二日が、彼女には長すぎる時間だったのだろう。


「……」

「好きなんでしょ」

「好き……? よく分からないです」

「そうかい?」

「はい。わたし、みんなのこと好きです。けれど、その……」

「ユーリは特別、なんでしょ」


見てれば分かるよ。

と言えば、頬に赤が灯る。

可愛らしい反応だ。


「羨ましいね、青年は。こーんなに可愛い嬢ちゃんに愛されて」

「あ、愛!? い、いえ、そんな……」


慌てて否定する様は、本当に可愛くて、つい苛めたくなる。

が、あんまり苛めて泣かせたりしたら、黒髪の彼に殺されるだろうな、とレイヴンは苦笑した。


「レイヴン?」

「そろそろ、帰って来るんじゃないの?」

「そんなの分かりませんよ。いつになるか……」

「エステル!」


離れた場所から聞こえた声。

エステルは勢いよく振り返った。

そして、彼の姿を見つけると、走り出す。


「ホント、愛されてるね、ユーリは」


ユーリに抱きつくエステル。

二人の空気を眺め、レイヴンは笑った。





特別相談係

「二、三日で帰る。レイヴン。エステルのこと、頼んだぜ?」

(そう言われちゃ、仕方ないでしょ。青年には、勝てそうにないね……)






E N D



2009/06/06
移動 2010/12/14



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