月夜に一歩近づいて



「ここにいたのか」


フレンが『凛々の明星』他、メンバーに加わって数日。

最初はぎこちなかった空気も、今では随分姿を消した。


「どうしたの?」

「君の姿が見えなかったから、気になってね」

「そう……」


ジュディスは一瞬とも呼べる間、フレンに微笑みかけた。

すぐに空へと向いてしまったが。


「ジュディス?」

「何?」


夜風が彼女の髪と触手を揺らす。

その後ろ姿は儚くて、思わず触れてしまいそうになった。


「どうしたの?」

「あ、その……」

「どうしたのかしら、隊長さん」

「君にそう呼ばれると、何だか変だな」

「じゃ、フレン」


彼女に名前を呼ばれると、不思議な気持ちになる。

それの名前はよくわからない。


「ジュディス」

「本当にどうしたの? そんなに私の名前が気に入ったのかしら」

「……そうかもしれない」


クスクスと彼女の笑い声が聞こえてくる。


「貴方、面白いわね」

「そうかな。自覚はないけど」

「でしょうね」


楽しそうに笑うジュディスの声が、心地よく響く。

暫く笑っていた彼女が、口を開いた。


「私、眠れなかったの。隣で寝てくれるかしら?」

「え?」

「冗談よ。話に付き合ってくれて、ありがとう」

「ジュディス」


咄嗟に手を出してしまった。

掴んだ部分に、彼女の視線が注がれる。


「あ、すまない」

「構わないわ。やっぱり、一緒に寝たかった?」

「まさか」

「そうきっぱり否定されると、何だか傷つくわね」

「あ、いや、そんなつもりは……」


そこまで言って、彼女に遊ばれているのだと気づいた。

恥ずかしさが、熱に変わり、顔に集まる。


「貴方は見ていて飽きないわ」

「……何だか複雑だよ」

「そうね」


二人は並んで歩き出す。

明日に向けて休息をとるために。





月夜に一歩近づいて





E N D



2009/11/05
移動 2010/12/14



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