アカとクロの葬送



※要注意!!

※死ネタ

※流血表現注意

※狂愛的な話?

※ユーリ→→→←リタっぽい








いつもは、あたし達を守るその刃。

それがこんな風に自分に向けられるなんて、思わなかった。

手にしていた魔導書が、引き寄せられるように地面で跳ねた。


「……ユーリ?」


いつもとは違う、狂気を孕んだ漆黒の瞳。

何故、そんな目を向けられるのか、分からない。

自分は何かしてしまったのか。

思考回路は完全に停止したから、何も考えられない。

ただ底無しの不安だけがそこにあった。


「リタ」


優しい、冷たい、機械的にも聞こえる声。

思ったより、普段に近い声だった。

何をほっとしてるんだろ。

鋭い狼の牙は、今もあたしを狙っているのに。

首に噛みつくほどの距離を保っているのに。


「リタ」


さっきよりも優しい、あやすような声音。

まるで子守唄みたいに、あたしの中へ入ってくる。

広がっていく。

このまま満たされたいとも思う。

けれど、本能が危機を感じて叫び続けていた。


「ユ……リ」


掠れて声が出ない。

恐怖からか何からか。

ぽたりぽたりと、雫が頬を伝った。


「泣くなよ」


ユーリの指が、あたしの涙を拭った。

そのまま指先に力を込められ、爪が肌に刺さる。

痛いと思うほど強い力じゃない。

けれど、そこにも普段と違う“何か”があって、涙は勢いを増した。

こんなに泣いたのは、いつぶりだろう。

ぼんやりとした頭の中で、記憶を辿った。


「リタ」


三度目は、すごく甘い声だった。

そのままの調子で彼は言う。


「お前を殺して、オレも死ぬ」


……え?

何を言ったのか、理解出来なかった。

天才とか言われていても、あたしはまだ子どもだから。

違う……分かりたくなかったから。

冗談だと笑い飛ばしたかったから。

けれど、真剣な本気を宿した瞳が、それを優しく残酷に切り刻んだ。


「っ……」


声が出ない。

首を絞められたように、空気の侵入を喉で拒む。

苦しい。


「お前がアイツを好きになったのが間違いなんだぜ?」


ユーリが言う“アイツ”が誰なのか、何となく分かる。

だけど、好き……?

その好きは、みんなと同じ好きよ。

それ以上でも、それ以下でもない。

それを伝える術を、多分あたしは持っていない。

それに何を言ったって、届きそうにない。

何でこんな時に、分かりやすい結末を頭が流すの。

まるで、他人事のように、その映像を眺めていた。

バクバクとうるさい心臓。

お願い、お願いだから、静かにして。

逸らしたくても、逸らせない。

あたしの瞳は、ユーリを捉えて離さなかった。

キラリと室内灯の光を反射する刃を、じっと見つめている。

ゆっくり自分に向かってくるソレ。

嘘みたいに穏やかに受け入れた。

肉を斬る音と体で感じる熱。

衝撃で体が倒れた。

ドロリとした液体が顔にかかって、服が吸い込んで、気持ち悪い。

吐き出したい塊と必死で酸素を求める肺。

体は何を優先すべきか分からず、ただ硬直していた。

倒れたあたしへ突き刺さる二度目の刃。

勢いで、詰まっていた塊を吐き出す。

上手く空気を取り込めず、下手に咳き込んだ。

鮮血の匂いが充満して、この部屋を変えていく。

寒い、寒い、寒い……。

あれ?

暑いのかな?

すべての感覚が鈍る。

頭の中がぐちゃぐちゃだ。

そんな中、あたたかい何かに包まれる。

あ、ユーリか……。

やっぱり、あたしは寒かったんだ。

ユーリが動くと、ピチャリピチャリと水の音がする。

ここは、どこだったっけ。

……海、じゃない。

えーっと……。

ダメだ、考えがまとまらない。

それでもいいと言うように、彼は強くあたしを抱き締めた。

その感覚はもうないけど。


「愛してるぜ、リタ」


最期の口づけの味を、あたしは覚えていない……。






アカとクロの葬送

真っ赤な生命の湖で、最期と始まりを迎えよう。





E N D



2009/09/02
移動 2010/12/13



(実際の戦闘で、チャーム状態のユーリがリタ(操作キャラ)を戦闘不能にして、その後ユーリ自身も戦闘不能になった所からネタに)


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