嘘つきは大嫌い



木々に邪魔された場所での戦闘は、自分たちの行動を制限される。

それは魔物にとっても同じだろうが、その地を縄張りにしている分、こちらが不利だろう。

戦い慣れた仲間たちは、多少苦戦しつつも、無事に勝利を収めた。

少し休憩することになり、安全そうな拓けた場所でそれぞれの時を過ごす。

ふと辺りを見回せば、先ほどまで仲間たちの間を飛び回っていたお姫様がいない。

少し気になることがあるユーリは、彼女を探し始めた。

すぐにその姿が見つかり、ほっと息をつく。


「エステル」

「何ですか」


そっと近づき、ユーリは彼女の服の袖を捲る。

エステルの白い肌が、紫色に腫れていた。

イタズラがバレた子どものように、居心地悪そうに視線を逸らす彼女。

ユーリはため息しか出なかった。


「お前は無茶しすぎ」


そっと触れただけで、彼女は大きく震えた。


「そんなに痛いのを無理する必要ねぇだろ」

「ユーリには、関係ないです」

「……そうだな」


潔く彼女の手を離せば、エステルは慌てて顔を上げた。


「ち、違います。そうじゃないです。あ、あのっ……」

「怒ったわけじゃねえよ」


心配そうに瞳を揺らす少女の頭をいつもより優しく撫で、彼女の腕に視線を落とす。

人のケガには過保護すぎる対応をするくせに、自分のことは完全に後回し。

もう少し自分を大切にしてほしいと思う。

前衛に出ることを控えるとか。

言ったところで、ユーリの意見など聞き入れてくれないだろう。


「わ、わたしは、大丈夫です」

「へー」

「ちゃんと、あとで消毒して治療します」

「ほー」


ユーリの適当すぎる返事に、エステルはムッとした表情を見せた。


「ユーリ、ちゃんと聞いてます?」

「ああ、勿論」

「……聞いてるなら、いいです」


言葉が思いつかなかったのか、諦めたのか。

エステルは、何かを言おうとした口を静かに閉じた。


「でも、一つだけ。ユーリなんて嫌いです!」

「はいはい」





嘘つきは大嫌いなんて、可愛い嘘の前では言えないか。



E N D



2010/04/07
移動 2010/12/13



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