キミは少女のままでいて




※捏造話?






エステル。

本名をエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインと言う。

今日は彼女の『成人の儀』だった。

本来こういうものとは縁遠い彼らがここにいるのは、共に世界を救った仲間だから。

堅苦しい空気から逃れるため、バルコニーに出た。

きらびやかな世界は、自分には似合わない。

グラスの中の液体をクルリと回した。


「ユーリ!」


桃色の髪を軽く結って、シンプルで品の良いドレスを身につけた本日の主役。

あれだけの人数と笑顔で挨拶をしていたのに、疲れた様子を見せない。

ずっとそういう世界で生きてきたからか、と少し寂しくなった。


「エステル、おめでとう」

「ありがとう、ございます」


何度も同じやりとりをしただろうに、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「主役がこんなトコにいてもいいのか?」

「いいんです! だって、ユーリったら全然話をしにきてくれないんですから」

「わかるだろ? オレがこういうの苦手だって」

「わかってますけど……」


小さくなっていく声。

表情まで暗くなってしまう。

今日はこんな顔をさせたくない。

そっと彼女の頬を触れた。

ほんのり熱を持ったエステルの頬。


「ユーリの手、冷たいです」

「エステルは、あったかいな」


ユーリの手にエステルは重ねた。

彼女の体温は、何故ここまで落ち着くのだろう。

そのまま軽く触れる口づけを。


「ユーリ!」


咎めるように名前を呼ばれて、距離も取られた。

いつまで経っても可愛らしい反応に、頬が緩む。


「誰かに見られたら、どうするんですか!!」

「一応、考えてんだけどな」

「だとしても、です!」


プイッと顔を背けて、赤い頬がユーリに向いた。


「あ、見てください」


側に置いてあったグラスを持ち上げる。

酒の類いだろう。

パーティーでは飲むフリで終わらせたから、興味があるようだ。

エステルはグラスを傾け、そのアルコールを口に含もうとした。

咄嗟にユーリは彼女の手を掴んで止める。


「何です?」

「いや……」

「わたし、もう二十歳です」

「ああ、わかってる」


不服そうに頬を膨らませた。

止める権利はない。

けれど、右手は彼女の手を掴んだまま。


「ユーリ?」

「んー、なんつーか……。ワガママだな」

「ワガママ?」


答えを求めてきた彼女に、少し悩む。

嘘をついても構わないが、今日は。





キミは少女のままでいて





E N D



2010/01/11
移動 2010/12/13



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