約束の生徒会室



※学パロ






「はぁ……」


机上の書類を前に、ユーリはため息をついた。

文化祭関連の要望書が各クラス・クラブごとに。

その量はめんどくさい。

というか、そもそも自分はこんなことに向いていない。

そんなこと、親友だってわかっているはずなのに。

『生徒会長』という鬱陶しい役柄を与えた彼に、心の中で悪態を吐く。

最終的に引き受けたのは、自分だ。

そのことに責任は持つ。

先ほどため息を受け止めてくれた書類へ目を通し始めた。





* * *



「ユーリ?」


いつの間にか、眠っていたようだ。

肩を揺さぶられ、目を開ける。


「エス、テル?」

「疲れていたんですね」


どうやら、作業の途中で眠ってしまったらしい。

半分以上残っている書類に、またため息がこぼれそうになった。

壁の時計を見れば、もうすぐ下校時間だ。


「エステルはどうしてここに?」

「ユーリを探していたんです」

「オレを?」

「はい」


エステルは申し訳なさそうに、数枚のプリントを差し出す。

提出が遅れていた部活からの物だ。


「わざわざ悪ぃな」

「いえ……。あ、あの!」

「ん?」

「わたしに手伝えることがあれば、言ってください!」

「え、あ、ああ」


力強く押され、思わず頷いた。

自分一人より、彼女が協力してくれた方が確実に早く終わるし、ミスも防げるだろう。

ここは、エステルに甘えることにした。


「じゃあ、コレの確認を一緒にしてくれるか?」

「はい! でも、時間が……。明日の朝、でいいです?」

「ああ。助かる」

「い、いえ……」


下校時間を知らせる鐘が鳴り響き、二人は足早に生徒会室を出た。

夕焼け空が、白い校舎を同じ色に染め上げる。

ギリギリまで部活動をしていた生徒たちも多く、意外と賑やかだった。

正門前で二人は向かい合う。


「では、また明日」

「気をつけて帰れよ」

「はい!」


送ると言ったのだが、断固拒否されてしまった。

どこかふわふわとしたイメージのあるエステルを、一人で帰らせることに若干の不安を覚えていたのだが。


「大丈夫です。ユーリも気をつけて帰ってください」

「オレは別に」

「どんな理由があっても、ケンカは買っちゃダメですよ」

「……はい」


彼女には敵わない。

最近、ケンカとは程遠い生活をしているのに。

手を振り、帰って行くエステルとは真逆の道をユーリはゆっくりと歩き始めた。





* * *



翌朝。

先に来ていたエステルが、昨日の自分のように眠っているのを見て、ユーリは口元を緩ませた。

その少し後に、顔を真っ赤にする可愛らしい彼女を目撃することになる。





約束の生徒会室

「あ、あの……。わたし、お弁当作ってて、そのユーリの……」

「昼飯、一緒に食うか」

「……はいっ!」






E N D



2009/10/06
移動 2010/12/13



***

妹が、「ヴェスペリアの学パロって、だいたいフレンが生徒会長だよね」と言ったので、ユーリにしてみた。
何だかんだで、やるべきことはきちんとやる生徒会長が出来上がりました。

追記:公式でフレンが生徒会長らしい?(10/26)




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