1.後ろから抱き付く
シェリアに渡された買い物メモと手荷物を確認する。
買い忘れはなさそうだ。
帰ろうとしたその時。
「おっとうとくーっん!」
背後からのあり得ない衝撃で、荷物を一つ落としてしまった。
幸いなのは、その袋に割れ物が入っていなかったこと。
「……パスカルさん」
「ありゃ。ごめんね」
「貴方は、もう少し考えて行動してくれませんか!? 危険すぎます!!」
振り返り、そう言ったところで効果はない。
効果があるなら、彼女はとっくにやめている。
こうやって、背後から『攻撃』されるのは、一度や二度ではなかった。
気づかない時もあったが、大体は彼女の気配でわかる。
だから、避けようと思えばいくらでも避けられる。
それをしないのは、避ければ彼女が転んでしまうから。
何となく放っておけない女性なのだから、仕方ない。
「弟くん、大丈夫〜?」
「大丈夫です。ですが、いい加減やめてもらえませんか?」
「え〜」
「何が不満なんですか!?」
パスカルは空を見上げ、考え中だとわざとらしく表情を作った。
その顔がヒューバートに向けられると、彼女は太陽のように笑った。
「だって、これ、あたしの愛情表現だよ?」
陰りのない真っ直ぐな言葉に、返す言葉が見つからなかった。
後ろから抱き付く
ほら、弟くんも遠慮なくどうぞ!!
2010/03/19