1.手をつないで夜の散歩


扉を叩く音で、アスベルは目を覚ました。

辺りはまだ夜の闇に覆われている。

ぼんやりした頭のままでいると、また二回扉が叩かれた。


「はい?」


こんな時間に誰だと不思議に思いながら、扉を開ける。

そこに立っていたのは、ソフィだった。


「こんな時間にどうしたんだ?」

「あのね、眠れないの」


それは、謝る時の声音に似ていた。

アスベルはソフィの頭を優しく撫でる。


「じゃあ、散歩でもするか」

「……いいの?」

「ああ。ちょっと待っててくれ」


上着を引っかけて、アスベルはソフィと共に歩き出す。

ひんやりとした夜の空気が、静寂と相まって、何だか痛く感じた。

隣を見れば、嬉しそうに歩くソフィの横顔。


「ソフィ、寒くないか?」

「平気。あのね、手、つないでもいい?」

「いいよ」


ゆっくり重ねてきたソフィの手は、やっぱり小さかった。

壊さないようにと、そっと握る。


「アスベルの手、大きいね」

「ソフィの手は、可愛いな」

「可愛い?」

「ああ、可愛い」


ソフィは数秒置いて、頬を緩めた。

照れくさかったのか、少しだけうつむいて。






手をつないで夜の散歩

「すごく、あったかいね」と、彼女が笑っていた。



2010/03/19



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