4.正義を貫く為の悪事


世界には、人を苦しめて喜ぶ人間がいる。

自分の幸せを守るためには、平気で他のすべてを不幸にする人間がいる。

理想は所詮理想でしかなく、現実とは掠りそうもなかった。

そんな世の中に生まれたオレたちに、出来ることは何だろう。






「あんた――で間違いないか?」

「何だおまえは」


趣味の悪いアクセサリーをつけた男は、怪訝にオレを見た。


「間違いねぇんだな?」

「この俺に何の用だ」


気味の悪い、下品な笑顔。

ゾワリと得体の知れない物が背中を通り、心臓を締め付ける。

どうしようもない怒りが、ただそこにあった。

真っ直ぐに向ける刃と短い悲鳴。

瞬間、勢いよく並べていく言い訳。

ああ、耳障りだ。

雑音が洪水のようにオレを通り過ぎていく。

それに耳を傾ける気はない。

音をたてないよう、そっと構えて最低限の動きで終わらせた。


「“次”は、まともな人間になれよ」


届くはずのない言葉。

生きていようが、死んでいようが。



血を含んだ刃を払う。

漆黒に溶ける赤い飛沫。

重苦しい空気が、首を絞めるようにまとわりついた。

口が異常に渇く。

武器を収め、すべてを吐き出すように、ゆっくり呼吸を繰り返した。

手に残る感触は、慣れるものじゃない。

慣れたら、オレは終わりだろうな。

重い体を引きずるように、宿へ足を向けた。


「フレン……」

「やあ」


灯りの下に立つ親友。

その雰囲気がいつもとどこか違うような気がした。






正義を貫く為の悪事


それが自分に許された行為だなんて、思っていない。
いつか、いつか必ず……。







2009/09/16

発売まで後



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