目が覚めて、見上げると其処に貴方の寝顔




酷い雨に降られた。

朝には透き通るような青空だったのに、昼過ぎには雲行きが怪しくなり、一気に雨が降り始めた。

こぼれたため息が流される。

ティアは雨空を見上げ、どうしようかと考えた。

今は店先を借りて雨宿り中だが、空を見る限りしばらく止みそうにない。

このままここに立っているのは、少し寒いかもしれない。

涼しすぎる雨の音を聞きながら、憂鬱を表に出した。


「……ティア!?」


雨宿りをしているすぐ側の扉が開く。

驚いた声に驚いた。


「ルーク、どうしてこんなところに……?」

「ここの店、母上が贔屓してるトコでさ。商品を受け取りに」


落ち着いた雰囲気の店。

看板を見れば、どうやらお茶の専門店らしい。


「まだ止みそうにねぇな」

「ええ。さっきより強くなっているみたいだわ」

「ティア、こっち!」


ルークは先ほど出てきたばかりの店へとティアを引っ張った。

彼女の驚いた声だけが雨音の中に残される。

ルークが事情を話せば、店主は快く部屋を貸してくれた。

優しい笑みに迎えられ、胸があたたかくなる。

その温もりによく似たあたたかい部屋。

自分自身を包み込むその温度にティアの瞼は重くなる。

そう言えば、昨夜はろくに眠れていなかった。

こくりこくりと頭が揺れる。


「ティア」

「……に?」

「我慢しなくていいからさ、寝ろよ」

「……」


今度は返事ができなかった。






***


「ルー……ク……?」


まだ眠いと抗う瞼を開けて、ティアは目の前の現実を瞳に映す。

ティアの目の前には、目を閉じたルークの姿。

頭を動かして辺りを見てみれば、彼に膝枕をされているということだけわかった。

どういう状況なのか、少し前の記憶を取り戻そうと頭をフル回転させる。

しかし、残念ながらヒントすら見つからない。

目の前で眠っている彼の姿を見ると、自然と笑顔になっていた。

最近では、こんな風に寝顔を見る機会なんてない。

もう少しこの状況に甘えようと、ティアは踊る胸を抑えながら瞳を閉じた。





目が覚めて、見上げると其処に貴方の寝顔





title thanks『瞑目』



2011/06/01


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