恋を大空に歌いましょう




サラサラと風が通り過ぎていく音が聞こえる。

瞼越しに見る青空は眩しすぎて、ガイは起きることを先延ばしにすると決めた。

特に予定はない。

たまには、惰眠を貪っても良いだろう。

誰に対する言い訳なのか。

浮かんでは消える文章に口元を緩め、本格的に寝ようとした時だった。


「ガイ! こんなところにいらっしゃるとは思いませんでしたわ」


ふわふわと心地よい微睡みに溺れていたいと願う反面、愛しい彼女と言葉を交わしたいとも思う。

やけに重い瞼を開き、すぐ側、適度な距離の先にいる彼女の姿を瞳に映した。


「俺に何か用事かい?」

「ええ。でなければ、せっかくの貴方の時間を邪魔したりしませんわ」


その言葉に胸が痛む。

針を刺されるのは、こんな気持ちかもしれない。

用事がなくても、一緒にいてほしい。

他愛ない話で笑い合って、ただぼんやり空を見上げて、いつの間にか眠ってしまってもいい。

ナタリアとやりたいことが次から次へと溢れてきて、ガイは自分自身に苦笑した。

彼女に対する愛情の大きさに嫌でも気づかされたから。


「……ということなんですが」

「そうだな。まあ、大丈夫だろ。ルークやティアがいるなら」


そこに死霊使いの名前がプラスされている点が、ガイを果てしなく不安にさせている。

ナタリアも同じように感じたから、ガイに相談したのだろう。

けれど、大丈夫だ。

それは断言できる。


「ですが……」

「きっと大丈夫。君が心配するような事態にはならないさ」

「貴方がそうおっしゃるのなら……」


歯切れの悪い言葉だったが、表情は晴れやかだった。


「とても気持ちいいですわね。こんな天気だと、遠出したくなりますわ」

「じゃあ、行くかい?」

「え?」

「俺と一緒にさ」


ナタリアは大きな瞳をさらに大きくする。

そのまま微笑って頷いた。


「エスコートお願いしますわ」

「喜んで」


拒絶したがる心を抑え込んで、ナタリアの手を取った。

柔らかい、けれど戦いに身を置く女性の手。

賑やかな鳥の声を始まりの合図に、ガイは一歩踏み出した。





恋を大空に歌いましょう





title thanks『空想アリア』



2011/05/29


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