89.焼き付ける

朝焼けの空は美しい。

いつもより早起きした二人は、そんな空を眺めていた。

ゆっくりと色が変わっていく空。

夕焼けとはまた違った空気が流れている。

新しい空気、新しい朝が始まる合図。

新しい一日を告げる空。

何と心地よいのだろう。

クレアは早い朝の空気を思いきり吸い込んだ。

体内が洗われていくような錯覚。

本当に気持ちいい。

クレアはフフッと笑った。


「クレア?」

「あ、ごめんなさい。突然笑ったら驚くわよね」

「いや、嬉しそうな顔だったから、気になったんだ」


クレアはヴェイグを見上げ、また微笑む。


「そうね、嬉しいわ。ヴェイグと一緒にこんな綺麗な景色を見れたのだから」

「確かに、綺麗だな」


幸せのため息をつくようにヴェイグはそう言った。

同じものを見るのは初めてではない。

数えきれないほどのものを一緒に見てきた。

それなのに、毎回何故か嬉しくなる。


「ヴェイグ」

「何だ」

「もしかして、すごく眠たかったんじゃない?」

「そんなことはない」


そう言いながら、大きな欠伸を一つ。

あまり説得力がない。

少し無理矢理な連れ出し方をしたクレアは、そっと胸を痛めた。

小さな痛みは頭を振ることで吹き飛ばす。

ヴェイグはクレアが謝ることなんて望んでいないだろうから。


「ヴェイグ、嫌じゃなかったら、また付き合ってくれる?」

「嫌なはずがないだろう。オレで良ければ、いつでも付き合う」

「……ありがとう」


朝日に照らされるヴェイグの横顔は、何だかいつもと違って見える。

いつもより、かっこよく見える。

その顔をじっと見つめる。

そして、また嬉しそうに笑った。






や き つ け る



2011/11/01




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