69.攫う

※未プレイなので、キャラ崩壊注意






水と緑に囲まれた綺麗な街。

自然が生み出す芸術を目にすれば、ベリルはわかりやすく瞳を煌めかせた。

目は口ほどに物を言うというが、今の彼女を見た人間はベリルが何をどう感じたのか、すぐにわかるだろう。

そんな顔をしていた。


「よし、ここにしよ」


ベリルは持っていた道具を足元へ置いた。

そして、絵を描く準備を始めた。


「何してんだ?」

「見てわかんない? 絵を描こうとしてるんだけど」

「お前が?」

「文句ある?」


ヒスイの話を軽く流しながら、準備を進める。

手早く終え、さあ描き始めようと意気込んだ。


「おい」

「まだ何か文句ある?」


ヒスイは大きな帽子のツバを持ち上げる。

子どもっぽいが同い年の少女の顔がはっきり見えた。


「何だよ。用がないなら、さっさとどこかへ行ってよ。ボクはヒスイと違って暇じゃないんだから」


絵筆を軽く振り、邪魔だと訴える。

今感じたこの気持ちを、この景色を一瞬切り取ってキャンバスに残しておきたかったから。

早く描きたいという衝動が、外へ出たいと暴れまわっていた。


「来い」

「ちょっ、どこ触ってんだよ。セクハラ〜!!」

「うるせぇ。ちっとは黙れ」


ベリルの腹部に腕を通し、彼女を抱えたヒスイはそのまま歩き出す。

離せと暴れるベリルを気にすることなく平然と。


「ヒースーイー!」

「黙れ」

「うぐっ……」


いつもより低い声で言われたら迫力がある。

文句を100も200も並べたかったベリルが思わず黙ってしまった。

怖い、というわけではない。

仕方なく抱えられた状態を受け入れることにした……というわけにもいかず。


「やっぱり、離せー! 軽々しく女の子に触るなー!」

「もっと色気を身につけてから発言しろ」

「馬鹿にしたな」


ギャイギャイとうるさいベリルを抱えたヒスイの頬は、わずかに緩んでいた。






さ ら う



2011/10/27




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