7.想う


カサカサと草をかき分ける音が聞こえる。

パティは警戒する様を見せず、顔を向けた。

予想通りの人物がそこに現れる。

優しい目で柔らかな表情で、パティは彼の存在を受け入れた。

随分膨らんだ感情だと他人事のように思いながら。


「パティ、一人でこんなところにいたら危ないだろう?」

「そうかの? 魔物の気配はないし、地盤も安定しておる。ここらの草に毒性の強いもの……」

「パティ」


たしなめるように名前を呼んだフレンに対して、頬を膨らませて抗議をする。

仲間を想っての言葉というより、幼い子どもに対する言葉に聞こえたから。

大きな分厚い壁は要らない。

心の中で一度頷いた。


「フレン!」


パティは小さな体を大きく見せるように背伸びした。

太陽のように笑ったパティは、宣戦布告でもするかのようにフレンを指差した。

指された本人はその意味がわからず、説明を求める。


「フレンはたまに読めないのじゃ」

「何の話だい?」

「フレンの話じゃ」

「僕に言わせると、君の方が読めないよ」

「簡単に読まれてはつまらんからの」


確かにそうかもしれないと思う。

少しの間を挟んで、フレンははっきり言った。


「僕はパティが好きだよ」

「あっさり言うものじゃの」

「嘘じゃないからね」

「わかっておる。フレンは嘘が下手じゃからな」


そう言えば、フレンは複雑そうな顔をした。

パティの言い方は、褒め言葉とも貶し言葉とも取れなかった。


「うちの気持ちはフグのように膨れておるぞ。フレンには受け止められんじゃろ」

「やってみないとわからないよ」

「そうかのー?」


少し意地悪して言ってみる。

彼の言葉は、大きすぎるパティの気持ちを受け入れると言っている。

それが嬉しくて、照れくさかったから。


「パティ」


急に抱きしめられ、驚きが心臓を叩く。

大きくなった音から逃れるように顔を動かすのだが、しっかり抱きしめられていて身動きが取れない。


「フレン」

「何だい?」

「うちは、うちはの……」


言いたいことはすべてわかっているから、とでも言うようにフレンは少し力を込めた。






お も う



2011/05/28




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