入院・新入り・お約束




※新キャラ(パスカル・マリク)が発表される前から書いていたものに、無理矢理2人を入れてみたもの。



入院・新入り・お約束






「ソフィ、出かけるぞ」


眩しい太陽が少し高くなった日曜日。

ラスボス戦間近のテレビゲームをプレイしていたソフィは、メニュー画面で振り返る。


「どこへ?」

「決まってるだろ。ジョセフィーヌを治せる所だ!」

「……」


養ってもらう身のソフィは、余程のことがない限りアスベルにくっついている。

この時代は、彼女一人では少々生きにくい。


「ソフィ?」

「待って。すぐ用意する」


回復効果のあるセーブポイントでゲームを終了し、ソフィは出かける用意を始めた。


「……ソフィ」

「何?」


戸締まり確認を終えたアスベルは、彼女の荷物にため息をつく。

この短時間でよくここまで用意出来たものだ。


「一応、訊く。それ、何だ?」


ソフィは少し考えて、答えた。


「鞄」

「そんなことを訊いてないわぁっ!!」


一週間ほど生活可能な大きな旅行鞄。

引きずる様を見てみれば、ものすごく重そうだ。


「中身は?」

「おやつ」

「……そんなに要らないだろ?」

「大丈夫。ちゃんと300万ガルド以内だから」


単位を聞き間違えたかもしれない。



(……300ガルドだろ?)



遠足に持って行くおやつの定番金額は300ガルドのはずだ。

アスベルはもう一度尋ねた。


「いくらだって?」

「300万ガルド」

「……」


残念ながら、聞き間違えたわけではなかった。


「ソフィ」

「何?」

「それを置いて出かけるぞ」

「イヤ」


いつもはこんな風に拒絶する少女ではない。

何度か説得を試みるも、「イヤ」の一言で拒絶された。


「どうしてなんだ。少し出かけるだけで、そんなにおやつは要らないだろ」

「わたしには、必要。アスベル……」


瞳を潤ませ、じっと見つめる。

ダメだ。

アスベルはため息をついた後で、ソフィに告げた。


「欲しくなったら、その時買ってやるから、その鞄はやめてくれ」

「了解、隊長」


ピシリと敬礼を決めたソフィ。

ようやく、出発することが出来た。

今日はマンションを出たところに彼がいた。


「アスベルか」

「管理人さん」


キャラクターがプリントされた、まったく似合わないエプロン。

それを装備した管理人――マリクは、箒を動かす手を止めた。

彼が苦手なソフィは、アスベルの影に隠れている。


「出かけるのか」

「はい。病院まで」

「……どこか悪いのか?」


心配そうに近寄るマリクに怯えたソフィは、アスベルの腕を思い切りつねった。


「痛っ!!」

「だだだ大丈夫か!?」


狼狽えるマリクの前に手を出し、止める。

これ以上彼が近づけば、またソフィにつねられる。

……それだけで済めば良い方か。


「大丈夫です」

「お前は無理をすることが多い。オイラは心配だ」

「……はい?」


彼は今何と言った。

アスベルは脳内で、何度も繰り返す。

結論として、何も聞かなかったことにした。


「では、失礼します」

「待て。やはり、オイラもついて行った方が……」

「管理人さん、そのオイラって」

「マイブームだ!!」


眩しい笑顔と何やらよくわからないポーズ。

戦隊ものに憧れる子どもってこんな感じだよな〜と、アスベルはこの時間を流した。


「では」


曖昧な笑みを浮かべ、アスベルは足早にその場を離れた。

大通りに出れば、すぐそこに目的地がある。

二人は広い店内へと足を進めた。


「いらっしゃいませ」


ニコリと営業スマイルを貼り付けた店員が、アスベルに声をかけた。

ネームプレートには、『パスカル』と書かれている。

若く見えるためバイトかとも思ったが、どうやら正社員らしい。



後編




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -