ラピードのいない一日




※前半未プレイ時に作成






うららかな午後。

ソファでうたた寝していたユーリの元へ、エステルが走って来た。

そして、ユーリのお腹へ飛び込んだ。


「う、げっ……」

「ユーリ、大変です!」

「エステル……と、取り敢えず、退けてくれ……」


エステルは素直にユーリの上から退けた。

ユーリは痛むお腹を押さえ、起き上がる。


「久しぶりにいい夢見てたのに……」

「いい夢? どんな夢だったんです?」

「フレンに“かけっこ”で勝つ夢!!」

「……そうですか」


得意げに握り拳を作るユーリを、エステルは軽く流した。


「で、何の用なんだ? 急いでいたみたいだったけど」

「大変なんです!」

「何が大変なんだよ」

「ラピードが家出したんです!」

「……」






ラピードのいない一日







エステルに集められたメンバーは、食堂の角の席に座っている。

四人用のテーブルに五人。

……五人?


「ジュディはどうしたんだ?」

「そう言えば、朝食後から見てないわね」


ユーリの問いにリタが答えた。

いつものメンバーだが、ジュディスとラピードが足りない。


「そんなことはどうでもいいんです! 今わたし達が考えなければならないのは、ラピードです!」


テーブルを叩いた衝撃で、グラスが派手に倒れた。

被害はカロルとレイヴンだったので、ユーリは気にしないことにした。

二人は何か叫んでいるが、この際無視だ。

他の客の迷惑にはなるが。


「そんなことって……ジュディは大事だろ」

「何言ってるんです? ユーリは、ラピードよりジュディスが好きなんです!?」


好き嫌いの問題ではない。

ラピードのことは大丈夫だ、と付き合いで分かっている。

ジュディスも大丈夫だろうが。


「メモとかなかったの?」


退屈そうにしていたリタが、術でカロルとレイヴンを黙らせた後で、エステルの方を向いた。


「ありますよ?」


エステルが取り出したのは、この食堂のナプキン。

それには、獣の足跡が一つ。


「探さないでくださいって書いてます!」

「「……」」


ユーリとリタは顔を見合わせた。

そして、ため息をハモらせた。


「エステル」

「何です?」


少し苛立った様子で、返事をする。


「それ……」

「ラピードがわたしに残してくれたんです! でも、探してほしいに決まってます!」


何と言っても、通じそうにない。


「家出の理由って何だろうね」

「ご主人が気に入らな――ぐふっ……」


目的の人物以外には、被害を出さない完璧なリタの本気。

そこから復活したカロルは、ソレを尋ねてみた。

軽い冗談で返したレイヴンを、ユーリは思いっ切り殴った。


「家出の理由……」

「そもそも、家出なんかじゃ――」


リタがそう言いかけると、エステルと目が合った。

頬を膨らませ、拗ねたようにじっと見ている。



後編




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -