◆指輪◆行方不明◆捜索隊◆
**注意**
一応、ドラマCD直後の話です。
なので、フォレストさんは登場しません。
これから、CDを聞くという予定の方は、気をつけて下さい。
*****
スポットとの戦闘を終え、彼らは一息吐いた。
◆
指輪
◆
行方不明
◆
捜索隊
◆
ここは、大海原を行く船の上。
先程の戦闘を感じさせない程に穏やかだ。
「ティルキスとアーリアの話とか、DSの話とかしたけどさ」
カイウスはそう切り出した。
「二人は、指輪を探しに来たんだろ?」
「「……ああ!」」
今思い出したとでも言いそうなリアクション。
もしかすると、本当に今まで忘れていたのかもしれない。
海を飛んできたのに……。
「お兄様、一体どんな指輪なんですか?」
「どんなって、それは……」
ティルキスは、頬を染め、アーリアの顔を見る。
それは、何かを確認する視線。
「わたしも聞きたいわ」
「実はさ……」
ティルキスは手招きし、彼らを呼ぶ。
そして、声を潜めた。
「コレ」
ティルキスは一枚の紙を取り出した。
それは、何かの設計図のようだ。
「何なんだ?」
「何って……見て分かるだろ! 指輪のデザインだよ!」
「ごめん。指輪のデザインに、ニンジンとかポークとか関係あるのか?」
「……後、ここの計算間違っているわよ。どうして、21×45が18になるのよ」
「それと、字も間違ってる」
「……」
沈黙。
波の音と海鳥の鳴き声が、よく聞こえた。
「えと、お兄様。指輪は、どこへ置いたんですか?」
「船室……かな?」
「じゃあ、早く取って来なくちゃな!」
見送り体勢のカイウスとルビア。
だが、ティルキスは動かない。
「ティルキス?」
「お兄様?」
恐る恐る声をかけてみた。
「よし。みんなで探しに行くぞー!」
「……」
何故だか分からないが、全員でティルキスが忘れた指輪を取りに行くことになった。
特に用事があるわけではないので、別に構わないが。
それにしても、どうして巻き込まれたのだろう。
四人は、『騎士の間』という札のかかった船室へと来た。
「入るよー」
軽いノリで声をかけ、扉を開けた。
「あ、ごめんなさい。間違えました」
開けた扉をすぐ閉める。
若干顔が青ざめているが、何を見たのだろう。
三人は触れないことにした。
それが、優しさだから。
四人は『使用人の間』という札の前に立った。
「……ティルキス、本当にこの部屋なんだよな?」
先程の事を警戒し、カイウスは確認した。
ティルキスはじっと札を眺め、頷いた。
「ああ。間違いない」
慎重にその扉を開ける。
……が、鍵がかかっていて開かなかった。
「……」
「……ここじゃなかったみたいだな」
四人は『りんごの間』という札のかかった部屋の前に来ていた。
ここに来るまで、順番に扉を全部開けていた。
残りはここだけである。
「なー、ティルキス。本当に指輪を船に忘れたのか?」
「失礼します」
「おい。オレは無視かよ!」
ティルキスはカイウスを華麗に躱し、扉を開けた。
部屋の中には、誰もいない。
「お兄様、指輪ってこれですか?」
ルビアが見つけたのは、赤・青・緑の小さな宝石が飾られた銀色の指輪。
「それじゃないな……」
「じゃあ、コレ?」
アーリアは蝶の飾りがついた金色の指輪を指した。
「それも違う」
「それなら、コレ?」
「違う」
「コレは?」
「違う」
「あっちのは?」
「全部違う」
「……」
カイウスは何も言わずに見守っていた。
ただ、『何でこの部屋に、こんなに指輪があるんだろう……』と思っていた。
まるで、どこかの店を彷彿させる程、数多くの指輪があった。
「もうこれでいいじゃない」
「そんな適当なこと出来るはずないだろ。アーリアに贈る大事な指輪なんだから」
「ティルキス……」
またしても、外野を忘れ去るかのような二人の世界。
カイウスはどうすればいいのか分からなくなった。
ルビアは何だか羨ましそうに見ているし。
「オレ、甲板にいるぞ?」
誰も返事をしなかったが、気にしないで部屋を出た。
「あー、疲れた!」
カイウスは甲板にあるベンチに座って、伸びをした。
疲れるようなことは何もしていないが、何となくそんな言葉が出る。
「ねえ、カイウス」
「る、ルビア!?」
今まで隣には誰もいなかったはずだ。
なのに、何故ルビアがそこにいるのだろう。
「お兄様もアーリアも幸せそうよね」
「まあな」
「羨ましいわよね」
「何が?」
「今度の誕生日は、指輪が欲しいな」
「ルビア?」
「べ、別に買って欲しいなんて言わないわよ」
「おい」
「でも、やっぱり欲しいし……」
「おーい」
「あ、ここは思い切って盗んじゃう?」
ルビアは人の話を聞く気がないようだ。
一人で笑ったり、顔を赤くしたりしている。
女の子とはこういうモノなのか、とカイウスは溜め息をついた。
「なあ、ルビア」
「ん?」
「結局、指輪は見つかったのか?」
「まだみたいね」
「……」
船が港に到着する前に、指輪は見つかるのだろうか。
次回に続く(嘘)。
E N D
2008/02/28
移動 2011/02/01