今が嫌いと言いながら変わることを恐れる僕らは



※学パロ






最後の授業が終わった、放課後という時間。

返却された試験の答案用紙を眺めるレイアの顔は難しい。

小さな唸り声と眉間に寄ったシワ。

そんなに成績が悪かったのだろうか。

少し心配していると、彼女は不意に顔を向けた。


「あ、ごめん」


咄嗟に謝るもレイアは不思議そうに頭を倒す。


「何で謝るの? ジュード何かした?」

「そういうわけじゃなくて……」


何と言葉をかけたら良いのかわからなくなり、ジュードは下手な愛想笑いを浮かべた。

それだけでレイアは悟ったのだろう。

ふぅと息を吐き出した。


「別に成績が悪かったわけじゃないって」

「そうなの?」

「……やっぱり、そう思ってたんだ」

「あ、いや、その……ごめん」


ジュードはまた謝った。

それを聞いてレイアは笑う。


「違うことを考えてたんだよ」

「違うこと?」

「このままでいいのかな……ってこと」


それだけではジュードに伝わらなかったらしい。

よくわからないと、彼にしてははっきり顔に出したから。


「何て言えば、いいのかな……」


レイアは考え込む。


「別に、今が不幸だーとかは思わないけど、もっと良い方向に変えられないかなってこと」

「んー……何となくわかるような、わからないような」


ジュードの返事を聞くと、レイアは笑った。

100パーセント同じ気持ちを共有しなくていい。

わかってくれなくてもいい。

ただ、たとえば1パーセントでも同じ気持ちになれたら、何だか嬉しくなれる。


「明日は晴れるといいね」


窓の外に広がる大空は、ゆっくり夕焼け空へ変わろうとしている。

明日の天気は良さそうだ。


「そうだね」

「明日晴れたらさ、帰りにカラオケ行こうよ」

「学校帰りに遊ぶことは禁止されてるよ?」

「カタいこと言わないの。あ……もしかして、ジュードって音痴?」

「レイア!」

「冗談だってば」


彼女は笑う。

とても楽しそうに。

ジュードは思う。

つい不満を口にしてしまうのは、まだ若いから。

世界のことなんて、まだまだ何も知らない。

小さな世界の中で、大人たちに反抗する。

それらを素直に表に出せる人間を「カッコイイ」と思う。

もっと自由な世界が欲しいと青空に手を伸ばす。

けれど、その青空に飛び込む勇気はないのだ。


「ジュード?」

「いいよ」

「え?」

「明日晴れたら、一緒にカラオケ行こう」


珍しいこともある。

ジュードがレイアの誘いを受けるなんて。


「じゃ、約束だからね!」


そう言って、レイアは教室を出た。





今が嫌いと言いながら変わることを恐れる僕らは





title thanks『啼けない小鳥のアリエッタ』



2011/10/26


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