ふたりはなかよしなんです
立ち並ぶ商店はどれも活気に満ちていて、見ているだけで元気が出てくる気がした。
興味をひかれる部分も多い。
くじ引きで今回一緒に買い物担当になったジュードとエリーゼは、並んで歩いていた。
買い物メモには、グミと食材だけ。
量はそう多くない。
武器や防具もそろそろ買い替えたい時期だが、それは自分に合ったものを見つける必要があるから、個人で買いに行くことになっていた。
人ごみに飲まれないように歩く。
エリーゼは緊張からか身を縮め、ジュードの背中に隠れながら歩いていた。
グミを買って、食材を買いに行こうとした時だった。
「ジュード」
彼の腕(というより袖)を掴んでいたエリーゼは、賑やかな空気に掻き消されそうな声で名前を呼んだ。
「ん? どうしたの?」
「あの、わたし……」
エリーゼの視線の先には、女の子が好むような雑貨屋。
「あの店に行きたいの?」
「……」
エリーゼは返事をしなかったが、わずかな変化が肯定を告げた。
「じゃあ、行こうか」
「……いい、ですか?」
「せっかくエリーゼが言ってくれたからね。僕も見てみたくなったんだよ」
完全にうつむいてしまった。
声をかけるより有効だと思ったジュードは、エリーゼの手を引き足を進める。
驚いたエリーゼの小さな悲鳴は、賑やかな空気に掻き消された。
予想を裏切らない店内。
ジュードは口に出さなかったが、少し居心地が悪かった。
隣にいるエリーゼを見れば、後悔なんてないけれど。
***
ふと店の時計に目をやると、指し示す時間に焦った。
このままだと帰りが遅くなってしまう。
輝く横顔を曇らせることに躊躇いはあるが、仕方ない。
「エリーゼ、そろそろ買い物に行こうか」
「……はい」
渋々といった様がわずかに見られたが、彼女はすぐに動き出した。
わかりやすく残念の色が見えたから、ジュードはその言葉を口にした。
「じゃあ、また来ようよ」
「いいの?」
「うん。僕で良かったら、いつでも付き合うよ」
「ジュード、が……いいです」
地面に落とされた言葉が可愛らしくて、ジュードは普段とは少し違う笑みを見せた。
それが彼女はお気に召さなかったらしい。
「今のジュードは、少し意地悪な顔をしています……」
「え。そんなつもりはなかったんだけど」
意地悪とは反対な気持ちだったはずなのに、エリーゼにはそう見えなかったらしい。
何だか複雑だ。
ジュードは買い物袋を持ち直す。
「とりあえず、今日はもう行こうか。僕はいつでもエリーゼに付き合うから、遠慮せずに誘ってよ」
「約束、です」
「うん」
ふたりはなかよしなんです
title thanks『カカリア』
2011/06/08