03



「いきなり何ですか、貴方は」

「俺の方が作品的には先輩だが、年齢は年下だ」

「何の話ですか」

「そんなに丁寧に話す必要はない。もっとフレンドリーに」


リヒター・アーベント(後の自己紹介により判明)はやけに発音よく『フレンドリー』と言った。

その言い方が気に入ったのか、もう一度繰り返した。


「大事なことだからな」

「……初対面なんで遠慮します。それに、貴方怪しすぎますから」

「俺は怪しくない。たまたま通りかかって、誰かが来そうな気がしたから決めポーズの練習をしていただけだ」

「それが十分怪し……」

「怪しくない。ヒーローというのはそれなりの……」

「その年で自称ヒーローを名乗られても……」

「俺をバカにする気か!!」


よくわからない言い争いは白熱し、ぜぇぜぇはぁはぁと二人揃って荒い呼吸を整えた。


「とにかく、貴方の力は借りたくないです」

「だが、パナシーアボトル(イベント用貴重品仕立て)を作るためには、過去に行くしかない。俺ならお前を過去に連れて行くことができる」

「……」


一瞬のうちに、フレンの頭を色々なことが通り過ぎて行った。

チェスターなら自然治癒力で何とかなるかもしれない、とか。

通りすがりの治癒術士がリカバー(またはディスペル)をしてくれるかもしれない、とか。

過去に行くってエターナルソードを使うのか、とか。

それとも『聖女』(とレンズ)の力で時空を移動するのか、とか。

色々考えたのだが、尋ねたところで効果的な解答が得られないと思ったから、何も言わなかった。


「……わかりました」

「一緒に行ってくれるのか。助かる。先日相棒に逃げられたばかりで、寂しかったんだ」

「……」

「さあ、行くぞ!」


準備をする間もなく、フレンはリヒターに連れられて(誘拐)不思議な空間へ入った。

星空の中心にいるような、不思議な空間。

前も後ろも。

上も下も。

右も左も。

小さな光の粒が散らばる、濃紺の空間だった。


「ここは?」

「俺から離れるな。別の場所に飛ばされ――……」


その瞬間、強い風が吹いた。

体が吹き飛ばされるほどに強い風。

思わず目を瞑った。



……どれくらい時間が経ったのだろう。

温かい光に、強く閉じていた瞳を開いた。


「……リヒター?」


強風を感じる前まですぐ側にいた彼がいない。

辺りを見回してもいない。

暫く待ってみたが、現れない。

どうやら、はぐれたらしい。

不安を感じることなく、フレンは右手を強く握りしめた。


「やった!」


感覚でしかわからないが、ここは過去の世界。

幸運だったのは、自分のよく知る場所だったこと。

情報を集めるため、彼は村へ向かった。






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