水溜まりに晴天



長く降り続いた雨は、ようやく終わりを見せる。

まだ細かい雨は降っているが、空は明るくなり雲の切れ間から光が射し始めた。


「アレク様、もうすぐで止みそうですよ」

「そうだな。随分長い間足止めを食らったが、これでまた先へ進める」

「はい!」


ニコリと微笑むミルヒレーテに、彼女のそれによく似た笑みを向ける。


「ミルヒレーテ」

「はい」

「疲れていないか?」


その言葉は突然だった。

雨により道を閉ざされた旅路。

予定外の休息は今日で三日目。

アレクシードの言葉をこのタイミングで聞くとは思わなかった。


「疲れていませんよ。充分休みましたから」

「本当に?」


珍しく疑いの目を向けた。

確かに、ミルヒレーテは少し無理をする傾向にある。

けれどそれは、アレクシードにも言えること。


「はい。ゆっくり休みました」

「それなら、良かった。いつもミルヒレーテには助けられているからな」


これから先も力を貸してもらいたいから、疲れを残してほしくなかった。

そう伝えれば、ミルヒレーテは少し驚いた顔をした。

それは一瞬ほどの短い時間で、すぐに彼女の持つ優しい笑みに変わる。


「心配しないでください。ちゃんと休んで、足手まといにならないようにがんばります」

「ミルヒレーテは足手まといなんかじゃないけどな」

「そうですか? それなら、嬉しいです。アレク様のお役に立てるように、もっとがんばりますね」


ミルヒレーテの言葉は彼女の気持ちそのもの。

決して、必要以上にプレッシャーを感じたり、自分を蔑んでいるわけでもなかった。


「あ、見てください!」


ミルヒレーテが指差した先には、大きな水溜まり。

その中に、澄み渡った青空が映っていた。

それは、手に入れたい輝く未来によく似ていた。





2010/07/06




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -