ねえ、一緒に生きて?
秒針が確かな時を刻む音が聞こえる。
虫の鳴き声も聞こえる。
同じ部屋にいる二人の間に言葉はなかった。
喧嘩をしているわけでもないし、それぞれやりたいことをしているわけでもない。
ただ静かな部屋に二人はいた。
「ジュディス」
「何かしら」
「少しだけ話を聞いてもらってもいいかな?」
「ええ、もちろん」
わずかに距離を埋める。
近づいたといっても、まだ壁をはさんでいるような微妙な距離。
それをお互い気にしない。
「最近、時間があっただろ?」
「そうね。ようやく落ち着いてきたから」
「だから、色々考えていたんだ」
「色々……の中身を聞いてもいいかしら?」
ジュディスは微笑み、けれど無理に話さなくてもいいと瞳で伝える。
「自分のこと、君のこと、世界のこと、未来のこと」
「本当に色々ね。それに、規模が大きいわ」
「そうかな。……そうだね」
頷いたフレンはどこか遠くを見ていた。
顔はジュディスに向いているのに、視線が合わない。
自分の言葉が原因なのにと少し寂しくなる。
「それで、何か見つかった?」
「ヒントくらいまでは近づいたと思うよ」
「そう」
素っ気ない返事。
子どものような独占欲に似ていた。
彼のすべてを欲しいとは言わないが、ほとんどは欲しいと思う。
自分が思っている以上に彼を想っていることに気づいた。
「ジュディス?」
「あ、ごめんなさい」
一言謝罪の言葉を口にして、ジュディスは震える心を無視して話を繋げる。
「私のお願い聞いてくれるかしら」
「何だい?」
「これから先、可能な限り多くの時間をあなたと過ごしたいの」
決まりきった答えを出すように、フレンは微笑んだ。
そして、応える。
「改めて言わなくても、僕はずっと前からそのつもりだったよ」
フレンが差し出した手に、迷うことなく重ねた。
2010/07/06