あの日君に出会えた事



一緒に暮らし始めて、どれくらいの時が過ぎたのだろう。

世界が大きく生まれ変わって、そんなにしないうちから一緒にいた。


「何を考えているの?」

「ん? 色々」

「珍しいわね」


ジュディスが指したのは、フライパンの中。

綺麗に焦がしたオムレツが、煙を出していた。


「げっ……」


慌てて火から離して、一息つく。

こんな失敗は久しぶりすぎる。


「貴方がそこまで考え込むなんて、一体何を悩んでいたの?」

「悩みっつーか、何つーか……」

「聞かせてもらえるかしら?」


話しなさいと言われているような気がした。

ジュディスはよくユーリを見ている。

だから、ユーリの感情に気づく。

話したい。

話したくない。

側にいてほしい。

一人にしてほしい。

そういったものに敏感で、いつも適切な距離をとっていた。

それを考えると、自分は随分彼女に甘えているのだと思った。

居心地が良すぎる。


「ユーリ?」

「あ、ああ……。その、アレだ」

「はっきり言ってもらわないと、わからないんだけれど」


楽しそうな光を放つ瞳には、もう見抜かれている気がした。

それでも彼女は待っている。

ユーリの口から、はっきりとした言葉で伝えられることを。


「なあ、ジュディ」

「何?」

「オレさ、初めて会った時からジュディに勝てる気がしないんだよな」

「そうかしら。私、貴方に勝った覚えはないのだけれど」


嫌味ではない笑い声が耳をくすぐる。

彼女を抱き寄せれば、抵抗されずに掴まえることができた。


「ジュディ」

「はい」


ドキドキと速まる音が彼女に聞かれている気がする。

息が詰まりそうな緊張感。


「オレと一緒に歩いていく覚悟はあるか?」

「もう少しストレートに言えないの?」

「伝わってるなら充分だろ?」


耳元で大きなため息が聞こえた。


「そうだな……」


上手い言葉が浮かばない。

合格ラインなんてわからないし、ジュディスが喜ぶような言葉もわからない。

今は本当に頭が働かない。


「オレにはジュディが必要なんだ」

「私にもユーリが必要よ?」

「だから……」


顔から火が出そうになるとは、こういうことか。

らしくなく言葉が震え、音になったか怪しい。

肩を濡らす熱い雫が、彼女の温もりが確かな現実であることを証明していた。



2010/06/18




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -