甘い。

甘ったるい。

イライラするほどに、甘い。

自らの食欲が、その甘さに吸い込まれているような気がした。

吐き出した自分の息ですら、甘い気がしてクッションを床に投げつけた。


「アリス!?」


驚きを纏ったオズの声。

そんな彼をいつもより何倍も強く睨みつけた。


「私は、チョコレートが嫌いだ」

「いきなりどうしたんだよ」

「とにかく、大っ嫌いだ」


腕と足を組み、プイッと顔を背ける。

「何も言わなくても気づけ」と今は言いたい。

無理でも何でも気づけと言いたい。


「アリス、もしかして、ヤキモ――……」


床に投げつけたクッションを手にとり、オズの顔へ思い切りぶつけた。

何とか不愉快な言葉を遮ることに成功し、アリスはほっとした。

と言っても、胸の中のモヤモヤが取れたわけではない。


「痛いよ、アリス」

「お前がうるさいからだ」

「えー。うるさいのは、アリスの方だろ?」

「違う」


オズがアリスの知らない少女たちからもらったソレを食べる度、重い何かが胸に溜まる。

だが、決して『ヤキモチ』なんかではない。

アリスは何度も自分に言い聞かせた。


「そんなに甘ったるいもの、大量に食べられたものだな」

「ん? そんなに甘くないよ」

「あ・ま・い。だいたいオズは――うぐっ」

「ほら、おいしいだろ?」


無理矢理押し込まれたカップケーキ。

味なんてわからない。

けれど、やっぱり甘かった。






チョコレート嫌いな君に

アリス。
一緒に食べよう?




E N D



2010/02/13




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