買い物がしたいと言ったものの、フレンの返事が怖くて、エステルはギュッと強く瞳を閉じた。
「私でよろしければ、お供します」
「フレンじゃなきゃダメなんです!」
「是非、お供させてください」
(ズルいです……)
いつも優しく微笑んで、エステルの望んでいる言葉をくれる。
それなのに、嬉しいよりも悲しいが勝る心に戸惑っていた。
それは二人の立場が関係しているからだろうか。
無意識についたため息。
「失礼します」
「はい?」
エステルの頬に添えられた手。
心配を宿す青い瞳とぶつかった。
「気分が悪かったりしませんか?」
「え、えと……」
「いつもより、曇っておられるように見えたので。何かありましたら、言ってください」
「……フレンは、意地悪、です」
エステルは、その優しい手を払った。
「エステリーゼ様?」
「フレンなんて、大嫌いです!」
そのままエステルは、城を飛び出した。
心にもないことを言ってしまった。
時間が経ち、冷静になればなるほど後悔が膨らんだ。
「エステリーゼ様!」
どんな顔をすればいいのかわからず、逃げ出そうとした。
彼女が走り出すより早く、フレンはエステルの腕を掴んだ。
「放してください」
「逃げないでいただけるのなら」
軽く暴れていたエステルは、その力を抜いた。
「すみません」
「え?」
フレンに謝られるなんて思っていなかった。
「あ、謝らないでください。わたしが勝手に、その、拗ねただけですから……」
「買い物、今からでも間に合いますか?」
「はい! わたし、フレンにチョコレートをプレゼントしたいんです」
エステルの言葉に、「ああ、そうか」とフレンは気づき、微笑んだ。
ビターのちスイート
わ、わたしは、ずっとずっとフレンが好きです。
E N D
2010/02/11