青く蒼く澄みきった空が見下ろす室内。
少し開けた窓からは、時折気持ちの良い風が入ってくる。
目も手も頭も、休むことなく動き続けていた。
机に頬杖をついて、真っ直ぐに見つめてくる視線。
思わず手を止めてしまう。
集中しすぎて彼女を放っておいたことを反省しながら。
「アリス、どうしたんだい?」
「うむ。腹が減ったぞ」
ぷう、と膨らんだ頬。
壁の時計に目をやれば、お昼を過ぎていた。
今更フレンも空腹を感じた。
「じゃあ、一緒に食べに行こうか」
「おう!」
アリスの瞳がキラキラと輝き、嬉しそうに何度も頷いた。
そのあとで、プイッと顔を逸らす。
「フレンがどうしてもって言うなら、特別に私が付き合ってやろう」
素直に尻尾を振っていた子犬のように見えたアリスが、その態度を変える。
おそらく、構ってもらえて嬉しい、とは見せたくないのだろう。
アリスがフレンの所に来たのは、久しぶりだった。
何かと運が悪く、時間が合わなかった。
それは仕方のないこと。
久しぶりの再会だったのだが、お互いの近況を語ったのは最初の十数分で、フレンは一言断りを入れて書類の整理をしていた。
「アリスは何が食べたいんだい?」
「肉に決まってる」
「そうだったね」
こぼれた笑い声を右手ですくう。
キョトンとしたアリスの追及をごまかし、食堂へ向かう。
昼時をやや過ぎたそこは、空席もちらほら存在した。
アリスを適当な席に座らせ、フレンは昼食を取りに行った。
二人分のトレーをテーブルに置き、少し遅くなった食事を始める。
当たり前かもしれないが、1人で食べるより誰かと食べるほうが楽しい。
いつもと同じメニューの味も違って感じる。
時間に急かされながら食べるのともまた違うだろう。
ふとフレンはスプーンを下ろした。
「ねぇ、アリス」
「んむ?」
思いきり頬張った彼女は、顔を上げてフレンの言葉を待つ。
「今度は僕に作らせてよ」
一緒に食事をする時は、たいてい公共の場所で食べる。
フレンはいつかアリスに自分が作ったものを食べてもらいたいと思っていた。
「……美味いものを作ってくれるならな」
「もちろんだよ。君の好きなものを用意する」
アリスはどこか複雑な顔をしながら、けれどニッと笑って頷いた。
「期待してるからな!」
止めた手を動かす。
美味しそうに食べるアリスを優しい眼差しで見つめ、フレンも自分の食事を再開した。
昼食を終えると、アリスはもう帰ると言い出した。
「……ごめん」
「謝る必要などないだろう」
「だが」
「関係ない。私は顔を見たくなったから、会いに来ただけだ」
「……アリスは優しいね」
本当に驚いた顔をするものだから、フレンのほうが驚く。
彼女は優しいと思う。
心の底から。
「今度はお弁当を持って、君たちのところへ行くよ」
「……ああ、待ってるぞ」
妙な沈黙には気づかないフリをした。
ていこくきしだんたいちょう
フレン・シーフォ(TOV)
と
ビーラビット
アリス(PH)
10/10/01〜10/10/14