じっと。
動きを止めて。
じっと。
音が聞こえるくらい見つめて。
ソフィの瞳を受け続けたマクモは降参のため息をついた。
「何だよ、ソフィ」
「マクモの目、変」
「……ヒドイ」
ソフィは頭を振った。
彼に上手く伝わっていないと気づいたから。
「マクモ、疲れてる?」
「んー……。普通だと思うけどな」
「そっか。マクモが変なのは、いつものことだよね」
「何気に酷いな」
純粋過ぎるソフィは、まるで生まれたての子ども。
ストレートな言葉には悪意の欠片など宿っていない。
その分強い力を秘めていることを、彼女自身気づいていないだろう。
「ほら、ソフィ」
マクモが取り出したのは、随分個性的なジャケット。
個性的……という言葉は便利だ。
センスとはかけ離れた、誰が好んで着るのか真剣に悩んでしまうような、カラフルな(目に痛い)ジャケット。
「……何、コレ」
「ソフィのために作ったんだ。名付けて――」
ソフィの拳が、マクモの顔スレスレを抉った。
サー……とマクモの顔から血が引く。
「ソフィ……?」
「あ、ごめん。命の危険を感じたから、つい」
つい、で殴られたら怖いとマクモはとりあえず、ソフィから一歩距離を取った。
彼女はそんなことを気にせず、マクモが落としてしまったジャケットに目をやる。
じっと見つめる瞳。
その瞳は、好奇心だとか、親の敵だとか、尊敬だとか、軽蔑だとか、数えきれないほどのものを含んでいた。
「ねえ、マクモ」
「何だ?」
「可愛い服、作って」
ソフィのお願いにマクモは目を見開いた。
「……何?」
「いや、何でもない。で、どんなのが良いんだ?」
ちょっと不安げな眼差しで、ソフィはリクエストを出す。
それを聞くマクモは真剣そのもので、そこに見えるのは職人の顔。
「任せとけ」
「うん。可愛いのよろしくね」
ニッと笑うと、マクモは作業を始めた。
邪魔だと言われなかったから、ソフィはその作業を側で見つめる。
1枚の布が、魔法のように形を変えていく。
「マクモの手、魔法の手だね」
「サンキュ。天選だからな」
「違う。マクモだからだよ」
手を休めず、マクモはソフィの話に相づちを打つ。
それは、心地よい時間だった。
「よし、完成」
「わぁー……」
朝陽を受ける雫のように、キラキラと輝く光が見えた。
先ほどソフィが拒絶反応を示したものを作った人物だとは思えない。
彼女のリクエストとマクモの優しさが織り込まれた服。
「ありがとうっ!!」
「せっかくだから、着て見せてくれよ」
「うん!」
ソフィの笑顔と彼女の言葉は、最高の誉め言葉だった。
プロトスヘイス
ソフィ(TOG)
と
したてや
マクモ(AC)
10/10/01〜10/10/14