キャンセル待ちの混雑した恋に




※ED後





気持ちいい天気だ。

透き通る青空は絶好のお出かけ日和。

ミレットは左手で陽射しを遮り、空を見上げた。


「ミレット殿!!」

「オウジ、早かったのね」

「いえ。拙者は今来たばかりで……」

「嘘はやめるデス。10分もそこらでウロウロしていナガラ、何を言ってるデスカ。馬鹿デスカ」

「……」


オウジが助けを求めて、ミレットへ視線を送る。

これ以上言われると泣く、と顔に書いてある。

助け船を出すことにした。


「ゲルダ、そのくらいにしてあげて。待たされるより、ずっと良いじゃない」

「確かに……。マスターも言ってマシタ。女性を待たせるようなヤツは最低ダト」


言葉の選択を間違えたとミレットは申し訳なさそうにオウジを見た。

それに気づくと、彼は慌てて両手を顔の前で振る。

気にしないでくださいと。


「それにしても、カライザの里に行くのは久しぶりね」

「ええ。ミレット殿が来られることを兄上もコトハも楽しみにしています」

「そっか。ゲルダも楽しみにしていたわよね」

「そんなことないデス」


プイッと顔を逸らして珍しく可愛らしい反応だ。

すぐに睨まれるだろうから、ミレットは緩んだ頬を軽く叩く。


「じゃあ、行きましょうか」

「はい」


三人の会話以外は静かな道。

あの頃よりも魔物は確実に減っていた。


「気になっていたのですが、その、ミレット殿の手にあるのは……」


小さめの鞄からはみ出して見えるのは、封筒。

今朝慌てて突っ込んだままにしてあったことを思い出した。


「今日届いた手紙」


正しく言うならば、恋文。

相変わらず上辺だけのつまらない内容だろうけど、読まないわけにはいかない。

自分のために時間を使ってくれたことへの最低限の礼儀だと思っているから。


「そんなもの必要ありませんよ」

「ちょっ、オウジ!」


勢いよく奪われてしまった手紙は、彼の手の中で居心地悪そうにしている。

返してという前に、彼は走って行ってしまった。

足が速いのはいつものことで、あっと言う間に姿は見えなくなった。


「追いかけマス」

「え? ゲルダ!? ……どうしよう」


一人ぼっちになったミレットは二人がいなくなった方を見る。

ゲルダはオウジに追いつけるだろうか。


「……目的地は同じなんだし、多分大丈夫よね」


ミレットは先にカライザの里へ向かうことにした。





*****



「早い話、アナタも書けばいいデショウ? ミレットへのラブレターを」

「!!」

「何を驚いているデスカ。始まりを迎えなければ、話になりマセン」

「ですが……!」

「言い訳など必要ないデス。好きか嫌いか、大事なのはそれデショウ?」

「そう……ですね……」

「早くしないと手遅れになる可能性も充分ありますカラ」

「!?」





キャンセル待ちの混雑した恋に





title thanks『つぶやくリッタのくちびるを、』



2010/10/27
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