ユーリ&シェリア




※Gフライング





気持ちよく寝ていたのだが、目が覚めた。

いつの間にか日陰は自分から離れていた。

眩しい光が瞼を刺激する。

移動してもう一度寝るかと考えていたその時、不自然に自分を覆う影。

ゆっくり瞳を開けば、赤が飛び込んできた。


「ユーリ、話を聞いて」

「……シェリ、ア?」

「もう! 約束の時間は過ぎてるわよ」


顔を背け、いつもより少し強い口調。

どうやら、怒っているらしい。

ユーリは上半身を起こし、改めて彼女を見上げた。


「悪かったな、シェリア」

「別にそんなに怒っていないわ。ユーリが忙しいの知ってるし……」

「でも、悪かった」

「……」


シェリアは強く瞳を閉じた。

立ち上がり、彼女の前に立つ。

シェリアの長い睫毛をぼんやりと眺め、言葉が紡がれるのを待った。


「私、どうしよう」


それまでの流れを切るように、すがるような瞳でユーリを見た。

彼女の悩みは知っている。

相談にのるようになって随分経つな……とわずかに記憶を辿った。


「どうもこうもないだろ。さっさとシェリアの気持ちを伝える。単純明解即解決」

「……いつもより、投げやりな気がするんだけど」

「気のせいだろ」

「そう?」


シェリア自身随分前にわかってはいるだろうが、行動に移せないでいる。

彼女の背中を押せば、相談役も終わりだ。


「シェリア」


うつむいてしまった彼女の頬に手をやる。

柔らかな髪がユーリの手をくすぐった。


「行ってこい。ここで待っててやるから」

「え? 今すぐ!?」

「とーぜん。善は急げって言うだろ」

「それは、急すぎる……」


どうしようと、今度は別の意味で悩み始めてしまった。

悩む時は、納得いくまで悩んだ方がいい。

この場合、それには当てはまらないが。


「大丈夫だって。兄貴の言うことが、信じられないのか?」

「いつからユーリは、私のお兄さんになったのよ」

「さあな。ほら」


壊れないようにと優しくその背中を押す。

一歩踏み出したその足を、本当の兄のような気分で見送った。






E N D



2009/10/20
移動 2011/01/20



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